海辺近くに設置された、クマの出没に注意を呼び掛ける看板(舞鶴市三浜)

海辺近くに設置された、クマの出没に注意を呼び掛ける看板(舞鶴市三浜)

 京都府が殺処分したツキノワグマが2019年度、過去最多の170頭に上った。府北部ではクマの出没が相次いでおり、住民は殺処分の件数を評価する一方、自然保護団体は「捕り過ぎで絶滅の恐れがある」と批判している。

 府によると、ツキノワグマは府レッドデータブックで絶滅寸前種とされ、生息数は由良川西側の丹後個体群が約900頭、東側の丹波個体群が約500頭と推定されている。
 170頭の内訳は京丹後市42頭、舞鶴市39頭、宮津市22頭、綾部市16頭、福知山市15頭、京丹波町12頭、南丹市9頭など。丹波個体群では、府の捕獲上限40頭を上回る83頭を専門家の意見を聞いた上で殺処分した。目撃件数は1460件で、府農村振興課は「ナラなどの実が凶作で出没が多かった。生息数や民家周辺での出没が増えており、人身事故を防ぐために捕獲している」と説明する。
 府は02年度からクマの保護を目的に狩猟を禁止し、従来はシカやイノシシのおりに捕まったクマは奥山に放つ学習放獣で対応してきたが、17年度以降は人的被害を防ぐため、集落近くで捕獲されたクマは殺処分を可能とし、17年度86頭、18年度103頭の殺処分した。
 舞鶴市の大浦半島は出没が多く、住民団体が府にクマ対策を要望。同市河辺中の会社員男性(64)は「家の中にクマが入ってきた話も聞く。出没が過疎化に拍車をかけている」と語り、同市佐波賀の農業女性(81)は「クマが家の柿の木に来て、家族が夜に軒下にいるのを何度も見た。危害を加えられるかもしれず、殺処分は仕方がない」と話す。
 一方で府によると、17年度以降、府内でクマの人身事故は発生していないという。保護団体「日本熊森協会」(兵庫県西宮市)の水見竜哉研究員は「生息数は正確な数字ではなく、人間が一気に捕獲すると秩序が崩れて絶滅に向かう恐れがある」と懸念する。
 クマが本来住む奥山がナラ枯れなどで生息できない環境となり、シカやイノシシをおりにおびき寄せる米ぬかなどの餌が出没を増やしている可能性も指摘。「奥山の状況を調べた上で捕獲を見直すべき。クマは人間を恐れており、音の鳴るものを身につけたり、民家近くの柿の木を切り、クマが潜みやすい茂みを刈ったりする対策も必要」と説明する。