佐川印刷(京都府向日市)は1日、財務担当だった元役員の男性(61)が子会社の資金80億~90億円を取締役会の決議を経ずに不正流用していた疑いがあることを明らかにした。元役員は社内調査に対し、2009~14年にかけて子会社の印鑑を無断で使用するなどして、シンガポールでの自動車レースなど国内外の事業に投資したことを認めたという。元役員は今年1月に辞任し、現在は所在不明。佐川印刷は京都地検への告訴を検討している。

 同社は資金の流用先となった事務所やマンションなど資産の仮差し押さえを京都地裁に申請し、一部認められたという。

 同社によると、資金流用があった子会社はエスピータック(京都府亀岡市)。1月下旬、佐川印刷の会長宅に、元役員の名前とともに「シンガポールでのサーキット事業に約30億円の資金が流れている」と記された投書が送られた。

 同社の聞き取りに対して元役員が認めた投資先は、サーキットでの自動車レース事業(約54億円)▽自身が代表取締役を務める東京都の不動産投資会社(約15億5千万円)▽南丹市のゴルフ場買収(約7億2千万円)▽モンゴルの金融機関の増資(約4億円)だった。

 動機については「知人男性から融資してもらえないかと言われ、将来の資金を確保しようと思った」と説明したという。同社は、元役員と知人男性が十数年前、業務を通じて知り合ったとみている。

 元役員は当時、佐川印刷グループの財務部門のトップで、エスピータックの財務も兼務していた。自身で管理していた同社の銀行印を無断で使ったり、インターネットバンキング決済を利用したりして、帳簿外で処理し、発覚を免れていたとみられる。

 佐川印刷の副社長は「社内のチェック機能が働かなかった」と管理体制の不備を認めた上で、「関係者にご迷惑をかけて申し訳ない。流出した資金の回収に全力を尽くしたい」と話した。

 信用調査会社によると、佐川印刷は1976年設立で従業員は約1350人。主な取引先は佐川急便グループ。日本フットボールリーグ(JFL)所属のチームを持つ。