ほとんどの店が休業し、ひっそりとしている祇園地区(20日、京都市東山区)

ほとんどの店が休業し、ひっそりとしている祇園地区(20日、京都市東山区)

祇園地区で営むバーの営業再開に向けてグラスを拭く芦田さん(19日、京都市東山区)

祇園地区で営むバーの営業再開に向けてグラスを拭く芦田さん(19日、京都市東山区)

 新型コロナウイルスの感染拡大でクラスター(感染者集団)発生の恐れがあるとして、京都府からバーやスナックなどの飲食店に出されていた休業要請が6月1日に解除される。京都市随一の歓楽街である祇園地区では、休業要請期間中、人通りがぱったり絶え、廃業する飲食店も相次いだ。バー店主の男性が取材に応じ、営業再開に向けた心境を「客足が戻るかどうか不安しかない」と語った。

 芦田弘三さん(43)=京都市山科区=。芸妓だった叔母の姿を見て育った少年時代、祇園で自分の店を持つことを夢見た。高校卒業後、板前修業や葬祭会社勤務など曲折を経て、5年前に念願の店を祇園に構えた。10席ほどの店内では仕事帰りの会社員や、芸舞妓を連れた客が集い、くつろいだ会話と酒を楽しんだ。
 状況が一変したのは3月。新型コロナの感染が拡大すると、祇園を訪れる客は激減した。京都府の休業要請が出るより前の3月末、芦田さんは営業休止を決断。周辺の同業者もほとんどが休業し、中には廃業に追い込まれる店もあった。
 飲み物の提供がメインのバーは、料理のテークアウトに活路を見いだすことも難しい。4月以降は収入ゼロが続く一方、店の家賃や共益費は支払わねばならないため、自身の生活費を含めると月の赤字は50~60万円に達する。京都府が休業要請に協力した事業者に支払う支援給付金10万円を受け取ったものの、とても足りず、貯金を取り崩す日々を送る。「生活はギリギリ」と芦田さんはこぼす。
 「やっと持てた店を簡単に手放したくはない」。そんな思いから、給付金の追加支給を訴える署名活動をインターネット上で16日から始めた。活動はネットにとどまらず、祇園界隈の同業者や常連客の間にも広がり、署名は千人を超えた。芦田さんの店の近くでバーを経営する男性も「祇園が沈んだら京都らしさがなくなる」と賛同した。祇園の飲食店で横のつながりが生まれるのは珍しいといい、芦田さんは「団結できたのは励みになった」と喜ぶ。
 23日には居酒屋を含む飲食店の時短営業の要請が解除されたが、祇園界隈の人出は今も少ない。芦田さんの心配は尽きないが、6月1日の再開に向け、せめて店の雰囲気を取り戻そうとお香をたいている。店の自慢という京都の四季を描いた絵を眺めながら、こうつぶやいた。「お客さんと笑顔で乾杯することが今、一番やりたいことです」