国が、2016年から始まった「全国がん登録」制度に基づくがん患者の実態分析を初めて公表した。

 16年に新たにがんと診断された人は99万5千人だった。国民の2人に1人ががんになると言われてきたが、より具体的なデータが示された。

 総数より注目すべきは、性別や部位別、地域ごとのがんの発生状況について詳細な分析がなされたことだろう。

 地域間や海外との比較が可能になる。がんの効果的な予防法や、確実に早期発見できる施策につながることを期待したい。

 全国がん登録は、全国の医療機関に届け出を義務化した「がん登録推進法」に基づく。診断された人の氏名や性別、生年月日、住所や医療機関、がんの状態や見つかった経緯などを登録する。

 これまでにも「地域がん登録」の制度があり、がんの発生状況について全国規模の推計をしていたが、任意登録で信頼性に疑問が指摘されていた。

 地域がん登録で15年にがんと診断された人は約89万人だった。一年で10万人超も増えたことになるが、新登録制度の正確さを反映した結果だ。前立腺がんや甲状腺がんが、地域がん登録では漏れていた可能性があるためという。

 がんの種類ごとに都道府県別の罹患(りかん)率なども公表された。胃がんや大腸がんは東北や北陸に比較的多く、肝臓がんは西日本に多い傾向が出ている。食生活の傾向や喫煙率などと関連付けたきめ細かい対策を、各地で進めることができるのではないか。

 国として信頼性の高いデータを蓄積したことで、国際協力も進められるはずだ。日本と同様に胃がんが多い韓国や台湾とは、胃がんを引き起こすピロリ菌対策などで連携を深めることも可能だろう。

 早期発見と適切な治療法の確立を、がん患者の生活の質向上にもつなげたい。

 国は「第3期がん対策推進基本計画」で「がんとの共生」を掲げている。治療をしながら仕事を続けるのはいまや一般的である。短時間勤務や在宅勤務などの普及を進めたい。

 部位別のがん患者数では肺がんが男女とも4位で、喫煙対策の重要性を改めて裏付けた。

 受動喫煙防止のための改正健康増進法が20年に施行されるが、例外規定が多く実効性が疑問視されている。今回のデータ公表を受け、国は早急に見直しに動くべきではないか。