むかしむかし、あるところに、たいそう昔話の上手なおじい…いや、おじさんとおばさんがおったそうな▼往年のアニメ「まんが日本昔ばなし」で育った世代なら、そんな話が浮かぶかもしれない。先日の市原悦子さんの訃報に、常田富士男さんが半年前に亡くなったばかりなのにと思った人は多いだろう▼2人が語りを担当した「昔ばなし」は約20年続いたが、今思うと人物の絵をかなり大胆にデフォルメして描いた回もあった。すんなり話に入れたのは、何とも言えないあの語り口の安心感からに違いない▼ドラマなどで見る市原さんは、役柄もどこか昔話に通じる庶民的なところがあった。親戚や近所を見渡せば、誰の周りにも1人は似た人がいそうである。あるいは母親に▼「家政婦は見た!」で人気を博すが、松本清張さん原作の1作目では「こんな嫌な女の役を、どうして私に?」と困惑したそうだ。自身もアイデアを出して愛されるキャラクターを目指し、回を重ねるごとに明るくなり、本物の家政婦から手紙をもらうまでになる(大野茂「2時間ドラマ40年の軌跡」)。めでたしめでたし、である▼さて昔話の上手なおじさんとおばさんは年を取り、不思議なことに相次いで亡くなられた。人々が強く安心を求めた、平成という時代だったそうな。