利用者の靴やスリッパが並ぶげた箱。満室状態が続き、新たに多数を受け入れるのは難しい状況が続いてきた(2009年撮影、京都市中央保護所)

利用者の靴やスリッパが並ぶげた箱。満室状態が続き、新たに多数を受け入れるのは難しい状況が続いてきた(2009年撮影、京都市中央保護所)

 京都市が市中央保護所(下京区)を廃止し、京都府向日市との市境に救護施設を民設民営で整備することに向日市住民から反対が相次いでいる問題で、京都市の説明不足が指摘されている。なぜ、中央保護所を廃止するのか。入所者の変化に対応できていない現状が浮かぶ。

 現在の市中央保護所は京都駅から徒歩圏内にある。入所定員は更生施設30人、緊急一時宿泊施設20人で、職員14人。京都市の2016年11月の資料によると、市の緊急一時宿泊事業を利用したホームレスの人ら411人のうち、50歳以上が5割、健康状態がよくない人が7割と高齢化が顕著だった。病や身体・精神障害、借金など1人当たり平均三つの課題を抱えており、自立が困難な人が増えている。ホームレスの人だけでなく、家賃滞納で賃貸住宅を追われた人、長年在院した精神科病院を退院したものの地域に受け皿がない人など、さまざまな生きづらさを抱えた人に対応しているのが現状だ。

 だが中央保護所は老朽化しており、全員に個室対応ではなく、エレベーターもない。介護職がおらず、高齢化や生活課題の複雑化に対応が追いついていないという。生活困窮者自立支援法に基づき、二つの旅館を借り上げた緊急一時宿泊施設(定員50人)もあるが、相部屋が基本で「入所者同士がトラブルに至りやすい環境」(京都市保健福祉局)という。

 京都市は2016年、現在の更正施設から介護職の配置が可能な救護施設の新設に転換する方針を決めた。定員は救護施設60人、緊急一時宿泊施設40人を併設と増える。市が指定管理者を置く「公設民営」から「民設民営」にするのは、苦しい財政事情が一因だ。公設では国の補助金がもらえないが、民設だと国庫補助が受けられる。

 京都市は昨年3月末、新たな救護施設を運営する社会福祉法人を公募。公募の要件には法人側が「最寄り駅から徒歩10分程度」の土地を取得することとされていた。応じたのは、京都市中央保護所の指定管理者である社会福祉法人「みなと寮」(大阪府河内長野市)だけだった。

 14日夜、みなと寮は向日市内で開いた住民説明会で「入所者の行動範囲を主要幹線道路付近に限定するなど、近隣の住宅地域への立ち入りを制限する」「ルールの範囲なら基本的に入所者の外出は制限できない。本人の希望を受けて、行き先や帰寮予定時刻などを伺った上で外出していただく。必要があれば必ず職員が同行する」と説明した。

 救護施設は地域移行を支援する施設であり、入所者は買い物などで外出し、地域と交流することを通して経験を重ねる。救護施設は全国に188カ所、約1万7000人が入所している。入所期間が10年以上になる人が4割、40年以上の人も8%(全国救護施設協議会の2013年度実態調査)と、長期化が課題になっている。同調査によると、入所前の居場所は精神科病院34%、在宅31%で、野宿生活していた人は3%と少なく、司法施設からは1%にも満たない。

 向日市の住民説明会では、「なぜこの用地を選んだのか」との疑問や不安だけでなく、「日常的にどのように入所者は過ごしているのか」との質問もあった。障害や病、老いを伴い生活に困難を抱える人をケアし、在宅移行を支えるにはマンパワーが必要だ。現行の救護施設の国配置基準に上乗せし、自治体が独自予算でスタッフ人件費を加配している例も全国的にはある。

 みなと寮は、救護施設について「制度のはざまにいる人を総合的に受け入れる唯一の場所」と強調する。身だしなみや生活習慣などの日常生活も含めて自立への礎をつくる。「施設がなければ生きていく場所がない人もいる」。地域の理解は必要として、京都市や向日市の住民に、今後も十分に説明を繰り返すという。