琵琶湖西岸の山裾に広がる棚田が黄金色に染まった。稲穂が重く垂れ、春先から丹精込めた苦労が間もなく報われる。兼業農家にとって、この3連休が刈り入れ時か。だが、所々に交じる休耕田が気になる▼国策に基づき長く続いた稲作の生産調整は廃止されたとはいえ、農業現場は高齢化や担い手の減少が止まらない。この10年で全国の農家戸数は約3割減り、農地面積もピーク時の4分の3に。政府は成長戦略で農産物輸出など「攻めの農業」に熱心ながら基礎体力の衰えが目立つ▼農林水産省が発表した昨年度の食料自給率がカロリーベースで37%に落ち込んだ。食料をどれだけ国内で賄えるかを示すが、戦後最悪の凶作でタイ米などを緊急輸入した1993年度と並ぶ過去最低の水準だ▼輸入小麦に頼るパンやパスタの需要拡大など食生活が多様化し、自給率の高かったコメの消費が落ち込んだのも要因の一つ。農政が日本の食卓の変化にきちんと対応できなかったのが響いた▼政府は自給率45%達成を掲げ、主食用米から飼料米や加工米へと誘導する。これ以上、田んぼを荒廃させてはなるまい▼<一里行けば一里吹くなり稲の風>夏目漱石。わが国の農業基盤を支えてきた原風景は実りの季節を迎え、のどかに見えても食の危機がじわじわと忍び寄る。