22歳の女子プロレスラー木村花さんが急死した。

 出演したテレビ番組での言動を巡って、会員制交流サイト(SNS)で激しい誹謗(ひぼう)中傷を受けており、自ら命を絶ったとみられる。痛ましい出来事に胸が痛む。

 インターネットを通じ、誰もが気軽に情報や言論を発信できる。利便性とは裏腹に、心ない発言に傷つき、つらい思いをしている人は多いに違いない。卑劣な「匿名の暴力」は許されない。

 男女6人が共同生活する様子を記録する人気リアリティー番組だった。リング衣装を誤って洗濯した男性に木村さんが憤った場面を放送。その後、SNS上で「お前が早くいなくなればみんな幸せ」「二度とテレビに出ないで」などと集中砲火を受けたという。

 番組の盛り上げのためにSNSが活用されがちだが、匿名を盾にした中傷は過激なほど注目され、話題になりやすい。番組は打ち切られたが、何が悲劇を招いたのか、歯止めをかけられなかったのか、番組制作側の検証が要る。

 ネット中傷を巡る被害は後を絶たない。総務省が運営するネット上の名誉毀損(きそん)やプライバシー侵害などの窓口への相談はここ数年、毎年5千件を超えている。

 ネット上の権利侵害を救済するため、2002年にプロバイダー(接続業者)責任制限法が施行された。当時はメールやブログが主流だったが、SNS中心の現代は拡散のスピードが格段に速く、被害は桁違いに大きい。

 ところが、現行法では匿名で投稿した発信者の特定には高いハードルがあり、被害救済には時間もお金もかかる。泣き寝入りする被害者も多いとみられる。

 このため総務省は先月末、発信者情報開示の在り方を検討する有識者会議を立ち上げた。請求手続きの簡略化など制度の改正案を年内に取りまとめるという。

 ただ発信者情報の開示は、憲法で保障されている「表現の自由」「通信の秘密」を損なうとの懸念を拭えない。例えば、匿名による正当な内部告発や政治批判にまで安易に情報開示を求めれば、告発や言論を萎縮させる恐れがある。どこまでが行き過ぎた発言となるのか、バランスのとれた議論を深めていく必要があろう。

 ネット空間には真偽や根拠が不明の情報があふれている。中傷や差別でなくとも、安易な追随や拡散が結果責任を問われかねない。一人一人が情報発信には責任が伴うことを忘れてはならない。