全国の鉄道がかつてない苦境に立たされている。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、外出自粛や休校、休業が広がって乗客が激減した。

 緊急事態宣言は解除されたが、次なる流行に備えた「新しい生活様式」としてテレワークが推奨されるほか、旅行やイベントも段階的な再開にとどまっている。この先、客足が戻るのか見通しが立ちにくい状況にある。

 長引く新型コロナの影響は、鉄道事業者の経営体力を奪い、今後の事業基盤を揺るがしている。地域住民の「生活の足」の存続が危ぶまれかねない。

 鉄道が置かれた状況は、新型コロナ禍で一変した。例年は行楽客らであふれる大型連休中、新幹線や在来線の利用が前年比9割減にもなり、異様なほどガラガラの車両が目立った。

 政府が全国に緊急事態宣言を広げ、旅行や帰省を控えるよう求めたためだ。移動の自粛は平日にも徹底され、「接触7~8割減」の要請を受けた企業の在宅勤務や時差出勤の導入で朝夕の混雑も減っている。

 国土交通省の調査では、全国の中小鉄道143社のうち、4月の輸送人員が前年同月比で「50%以上減少」と答えた事業者が7割に上っている。

 特に経営への打撃が大きいのがローカル線だ。もともと沿線の人口減少や経済の停滞から収益基盤がぜい弱である。乗客に多い通学生の定期券が休校で売れず、収入急減から資金難に陥った会社も出ているという。

 交通政策が専門の大学教授らでつくる「日本モビリティ・マネジメント会議」(京都市北区)は、コロナ禍で需要はすぐ回復せず、地方の鉄道、バスなど中小事業者の減収は最低でも1兆円に上ると試算。継続困難な事業者が相次ぐ恐れがあるとし、国による資金支援を提言している。

 緊急事態宣言の発令下でも、政府は市民生活や企業活動に支障が出ないよう各交通機関に運行の継続を要請し、事業者も急激な減便をせずに応えてきた。地域の高齢化に伴い、交通弱者の足を守るためにも公共交通の維持は重要課題といえよう。

 政府が決定した本年度第2次補正予算案では、中小の鉄道、バスなどの運行経費の半額や、間仕切り設置など感染対策費への補助金創設を盛り込んだ。

 自治体に配る臨時交付金も2兆円増額し、交通事業者の経営支援にも活用を促すとしている。運行や安全に関わる要員や費用に支障が出ないよう迅速で的確な支援が必要だ。

 利用人口が減少し、感染防止と両立を求められる今後の鉄道経営は容易でない。ただ、新生活様式への対応は、より地域に根ざした事業への契機になりうる。

 テレワークなど働き方改革で通勤者が減る半面、都市部ではラッシュ時の集中緩和によって要員や車両を効率的に回し、快適性も高められるのではないか。

 地方も運行体制を見直し、買い物、通院などの利便性や新サービスにつなげる工夫が求められよう。自治体による支援策と併せ、地域における鉄道の役割や在り方を巡って住民間の議論を深めていく必要がある。