夏季歳末特別生活資金貸付事業を案内していた京都市のホームページ。事業は2019年度末をもって廃止した

夏季歳末特別生活資金貸付事業を案内していた京都市のホームページ。事業は2019年度末をもって廃止した

 京都市は、所得の少ない人を対象に半世紀以上続けてきた「夏季歳末特別生活資金貸付制度」を3月末で廃止した。何かと金がかかる盆と年末の生活資金を助けてきた制度だが、利用する人が減る一方、滞納が膨らんでいることから打ち切った。市は他機関の制度を利用するよう呼び掛けているが、新型コロナウイルスの感染拡大が暮らしを直撃する中での廃止に、疑問の声も上がっている。

 廃止された制度は世帯の合計所得が生活保護基準の1・5倍以内の人が対象で、印鑑や健康保険証など住所と家族構成が分かる証明書があれば厳しい審査なく借りられる点が特徴だった。無利子・無担保、保証人も不要で、1人約3万円、1世帯当たりでは15万円まで借りられた。

 貸付金額は、初年度の1967年度が1427件約1740万円で、ピーク時の1998年度には2584件約2億5800万円まで増えた。その後は徐々に減り、2019年度は675件約3700万円にとどまった。実家への帰省や家族が集まって食事をする際の費用に使う人が多かったが、生活様式の変化でそうした使い道自体が減ったと市はみている。

 一方で、毎年1割強は返還がなされず、累積の滞納額は14年度に7億1600万円に膨らんだ。市は回収を強める一方で、18年度に回収困難と判断した1億3700万円分の債権を市債権管理条例に基づき放棄した。それでも、18年度末時点の未回収額は3億7000万円に上る。

 市は制度廃止に伴い、京都府社会福祉協議会が行っている「生活福祉資金貸付制度」の利用を促している。1955年度に創設された全国一律の制度で、失業や疾病、子どもの大学入学などさまざまな用途で利用できる。2018年度は府内で1894件約6億9600万円の利用があった。一時的に生計維持が困難となった人が対象の「緊急小口資金」もあり、無利子で10万円(新型コロナ関連なら20万円)まで借りられる。

 しかし、夏季歳末特別生活資金貸付制度を廃止した市の姿勢に元利用者らからは疑問の声が聞かれる。約10年前に妻の入院費や自宅の更新料として十数万円を借りた元料理人の男性(83)は「当時は貯金がなく貸し付けがあって本当に助かった。600人以上いる今の利用者は制度がなくなれば困るのでは」と首をかしげる。

 市が制度の廃止を決めたのは新型コロナウイルスの感染が拡大する前だが、生活に困る世帯が増える今、男性は「この時期に廃止しなくてもいいのでは」とも言う。

 市生活福祉課は「貸付制度は利用者にとって結局は借金。お金を貸しても自立に向けた根本的な解決にならない人は多い」と説明。制度は廃止するものの、通年の自立相談の受け付けや家計状況の助言など包括的かつ相談者に寄り添った支援を続けていくとしている。