山田洋次監督による1993年公開の映画「学校」の舞台は夜間中学だった。働きづめで文字が読めない中年、不登校だった優等生、職場になじめない中国人…。さまざまな背景がある生徒の交流から物語を紡ぎ出す。人のつながりが学び場にあることを教えてくれた▼コロナ禍による長い休みが明け、多くの学校がきょうから再開する。子どもたちは家にこもり、ひとりで課題に取り組む日々だった。やっと友達と勉強できる。仲間と一緒に学ぶ学校の意義を改めてかみしめるのではないか▼休校中、多くの学習塾は遠隔講義でオンライン授業を導入した。大学での採用が広がり、小中学校でも導入の可能性が出てきたようにもみえる▼ただ、学校は学力を高めるだけではない。クラスメートと過ごす何気ないひとときがつくり出す淡い思い出。ネットで代えられない部分はまだ多い▼「学校」の終盤で、中年生徒の病死をきっかけに生徒たちは幸福の意味をクラスで語り合う。顔を突き合わせ、悩みながら答えを導き出す議論は、リモートの液晶画面越しでは決してできないシーンだろう▼学習の遅れを取り戻そうと学校には学業だけを詰め込んでほしくない。失った時間は大きいが、これから子どもの思い出があふれるように新たなスタートを切ってほしい。