卒業シーズンのこの時期、制服の「第二ボタン」をもらった、もしくは、手渡したという青春時代の思い出がよぎる人もいるだろう。ところが最近こうした「第二ボタンの儀礼」が消えかけているらしい。憧れの人が身につけていたものをせめてそばに…。そんな乙女心はもう古いのか。
「知ってるけど、もらわないかな」「周りでも、もらってる子は聞いたことない」。京都市中京区の新京極辺りで10代の女の子に何人か尋ねると、こんな答えが返ってきた。
インターネット調査会社「ライフメディア」の2013年調査によると、「第二ボタンをもらったことがある」と答えた女性は20代と30代がそれぞれ21%と21・5%だったのに対し、10代は6・5%と約3分の1だった。「第二ボタンの風習はなかった」と答えた10代は37%を占めた。
そもそも「学ラン」は減っている。京都市立中学校で詰め襟の制服を採用しているのは現在、75校中わずか4校。多くはブレザーになったという。高校も同様で、黒い「学ラン」は6年前に洛陽工業高(南区)がブレザーに切り替え、姿を消した。第二ボタンは次々と消えてしまっていた。
数少ない学ラン採用校の大谷高(東山区)の大橋眞悟教頭(60)は「ほとんどの生徒がそんな風習を知らないと思う」と話す。ただ、滋賀県内では学ランが多く、草津市内の公立中6校のうち5校が学ラン。滋賀出身の20代女性で中学時代に第二ボタンをもらう友人が結構いたとの話がある。
別れというものへの意識の変化もありそうだ。
京都市内で学ランを採用している公立中4校の教頭に第二ボタンの風習が減った背景を聞くと「スマホがあるので、卒業でもう会えなくなるという感覚は薄れている」という声があった。街頭で聞いた10代女性は「スマホで一緒に写真を撮ってもらったほうがうれしい」と話した。
第二ボタンの「引力」は確実に失われている。