幸野楳嶺「群魚図」(左隻) 1871年

<ミュージアムのちから コロナ禍に考える>

 京都文化博物館(京都市中京区)は近くの高倉小と連携授業を行っている。主任学芸員の洲鎌佐智子さんはまず、児童に展示中の作品の一部を写真パネルで見せ、どれが好きか、なぜそう思うかを考えてもらった。

 その後、実際に作品を見せて一部だけを見た時との違いを感じてもらった。展示していたのは、国や府の無形文化財保持者の作品。名工の陶芸やガラス、染織作品のうち模様の部分だけを最初に見せたのだ。会場で児童は作家と交流もした。

 この取り組みで児童を侮れないと感じたという。作家に「作る途中で失敗したと思ったらどうしますか」と質問するなど、相手に敬意を払いつつも、自分たちが図画工作に取り組むのと同じ視点で向き合っていた。

 「動機付けすれば、児童はしっかりと作品を見る。興味を持ってもらうことが大事」。もちろん児童だけに限らない。会場で制作過程の映像を流し、一般の来館者も作品や作家への親しみを持てるよう工夫した。

 博物館は日常生活で忘れがちな「感動する心」を思い出せる場でありたいと考える。洲鎌さん自身、フランス・パリのオランジュリー美術館でモネの「睡蓮」が展示された部屋に入った途端、涙が止まらなくなったという。「なぜあんなに涙が出たのか自分でも分からない」。ただ、理屈抜きで感動を味わえた喜びは忘れられない。来館者にも非日常に浸り、心をほぐしてほしいと願っている。

 京都文化博物館が管理する作品では幸野楳嶺「群魚図」(京都府蔵)に感銘を受けたという。二曲一双の屏風(びょうぶ)に多様な種類の魚がまるで図鑑のように描かれている。涼やかで、画家の思いを想像するのも楽しい。

3月に開幕した特別展「京都 祇園祭」の会場。きらびやかな飾金具などが並んだ

 3月に始めた特別展「京都 祇園祭」は、五輪の年に世界の人へ京都文化を伝える狙いだった。歴史や神事を異文化の人に伝えるのは難しいが、山鉾の圧倒的な美しさで歳月の深みを感じてもらえる。美や祭礼は世界の共通言語だからだ。輝く飾金具をかつてない規模で展示し、近年の研究成果も紹介した。

 展覧会の企画はいつも不安だが、開幕すれば必ず作品が語ってくれる。作品にはそれだけの力がある。洲鎌さんはそう感じている。

 

 京都府京都文化博物館 歴史、美術・工芸、映画が3本柱。映画関係者の間で存在が広く知られ、最近では米国の俳優トミー・リー・ジョーンズさんが訪れたことも。古い映画の良さを若い世代に精力的に紹介するほか、歴史や美術・工芸でも受け手拡大の試みを続ける。観光で訪れた人が京都の歴史・文化の基本を学ぶのにも適している。総合展示室とフィルムシアターは開館中。詳細はホームページで。京都市中京区三条高倉。075(222)0888。