「かわいいブーケを見つけたよ」。そう言って贈られたのは「仏花」だった―。フラワーアレンジメントを手がける知人が笑いながら話してくれた。英国人の友人が、初めて訪れた日本の生花店で、店頭の「花束」に目を留めたのだという▼欧米の花材には鮮やかな常緑の枝物や彩り豊かな実物が少なく、艶々とした葉を茂らせたツバキやサカキなどを紹介すると、とても喜ばれるそうだ。光沢あるシキミの葉を背に菊やリンドウなどを束ねた仏花は、実に手頃な「ブーケ」に映ったらしい▼同じものを見ても、私たち日本人は仏壇や墓前に供える花だと理解する。それは、幼い頃から意識せずとも目にしてきたから。暮らしの中に根付いた「当たり前」。それこそが「文化」なのだろう▼もし子どもの頃から、そうした日常に接していなかったら? 畳の縁は踏まない、掃除は畳の目に沿って―。こうした教えも畳の部屋があればこそ。生活環境が変わった今、当たり前とは言いがたい▼文化庁の京都移転に向け、茶・華道や食を中心に、生活文化の振興が掲げられる。しかし、それさえも変化を伴い受け継がれてきた▼そもそも「振興」という言葉自体、なじまないようにも思える。時代とともに変化し育まれてきた暮らしぶり。今ある姿を丁寧に見つめよう。