「毎月勤労統計」の不正調査問題の影響が深刻化している。

 政府は雇用保険の失業給付など過少受給者への追加支給が必要になったとして、2019年度予算案の閣議決定をやり直した。

 極めて異例のことである。

 さらに、厚生労働事務次官も懲戒処分する方針だ。

 ただ、不正が長期間見逃されてきた理由や動機、目的などはほとんど明らかになっていない。事務方トップの責任だけで終わらせるわけにはいかない。

 追加支給の関連経費は、給付遅れで受給者が失った金利やシステム改修などを含め795億円に達する。労働保険特別会計の積立金や赤字国債の追加発行などでまかなう。余分な支出を生じさせたことは見過ごせない。

 対象者は延べ2015万人に及ぶが、1千万人以上は住所が把握できず、死亡した人もいる。政府内からも、全員に支給し直すのは「不可能」の声が出ている。

 統計への信用ばかりか、国民のセーフティーネットへの信頼を揺るがす事態だ。経緯を解明し、責任の所在を明確にするべきだ。

 12年前に発覚した「宙に浮いた年金」問題では、約4千億円の経費をかけながら、誰のものか分からなくなった約5千万件のうち4割が解明されていない。こうしたことを繰り返してはならない。

 深刻なのは、不正を認識しながら、表面化しないように隠蔽(いんぺい)しようとしていた疑いがあることだ。

 厚労省のマニュアルには、大規模事業所について本来のルールである全数調査ではなく抽出調査でもよいとする記述があったが、15年度以降に削除されていた。

 そのうえ、同省幹部は16年11月に総務省統計委員会に対し、全数調査を行っているかのように説明していた。組織ぐるみで取り繕っていたと批判されても仕方ない。

 不正を見抜けなかった政治の責任も重いが、政府与党から反省のようすはうかがえない。菅義偉官房長官は厚労省の対応を「統計法規定に則していなかった」と突き放し、与党からは厚労相の閣僚給与の自主返納を求めるにとどめるかのような発言も出ている。

 通常国会を控え、攻勢を強める野党の機先を制して早期沈静化を図ろうとの狙いが透ける。ただ、外部有識者による同省の特別監察委員会は17日に初会合を開いたばかりだ。24日には衆院厚労委員会の閉会中審査も予定される。

 幕引きを急ぐあまり、全容解明をなおざりにしてはならない。