巣板の上のセイヨウミツバチ

巣板の上のセイヨウミツバチ

<いきものたちのりくつ 中田兼介>

 日頃私たちが当然のように使っているゼロですが、実は古代インドで発見されたものです。ということはそれ以前の人間は、ゼロが数であるという考え方を持っていなかったことになります。そのためか、子どもが成長する際、1、2、3といった数は分かってもゼロを扱うのは苦手、という時期があるようです。このように人間にとっても少し難しいゼロですが、ミツバチはちゃんと数として扱えます。

 1、2、3といった数は、具体的な物と結びついています。例えば、置いてあるリンゴが目に入れば、その刺激が脳に伝わり数の感覚を呼び起こします。一方ゼロは「何もない」ということで、数の感覚を刺激する物がないところで扱われます。つまりゼロという数は、1、2、3といった数とは少し性質が違うのです。この「何もない」という状態を、1より小さい数だ、としたのが人間によるゼロの発見です。

 さてミツバチですが、すでに1から4までの数を区別できることが分かっています。そこで豪ロイヤルメルボルン工科大のスカーレット・ハワードさんたちは、まずハチに1から4個の四角形が描かれた2枚のパネルを見せ、少ない方のパネルに飛んでいくとエサがもらえることを覚えさせました。次に、2枚のうち1枚を、何も描かれていない空白のパネルにしました。するとハチは、高い正答率で空白のパネルを選びました。さらに、もう1枚のパネルに描かれた数が増えるほど、つまり空白パネルとの数の差が大きくなるほど正答率は上がりました。

 つまりハチは1、2、3といった数の順番が分かるだけでなく、何もない、という状態を、それらより小さい数、として扱っているわけです。つまりゼロです。これをミツバチが小さな脳でやってのけているのは驚きの一言です。(京都女子大教授)

◆中田兼介 なかた・けんすけ 1967年大阪府生まれ。京都大大学院で博士号取得。著書に「クモのイト」「びっくり!おどろき!動物まるごと大図鑑」など。「図解 なんかへんな生きもの」を監修。