開業から半世紀を迎えたジャズ喫茶「YAMATOYA」の店内。熊代夫婦(右)が往年の雰囲気を守り続けている(京都市左京区)

開業から半世紀を迎えたジャズ喫茶「YAMATOYA」の店内。熊代夫婦(右)が往年の雰囲気を守り続けている(京都市左京区)

 京都市内に残る最も古いジャズ喫茶の一つで、作家五木寛之さんの小説に登場した「YAMATOYA」(左京区丸太町通東大路東入ル)が、開業50年を迎えた。こだわりの大型スピーカーでレコードの響きを楽しめる往年の雰囲気を守っている。店主の熊代忠文さん(78)は「これからも人生を楽しみながらスイングを続けたい」と話す。

 半世紀の節目となった4月3日、大きな花束を携えた常連客が次々と店を訪れた。カウンターの中に立つ熊代さんと妻の東洋子さん(76)が笑顔で迎えた。
 元々は質屋だったが、高校時代からジャズ喫茶に入り浸っていた熊代さんが父の死去を受けて70年に転業した。戦前に建てられた木造2階建ての2階を私語厳禁の本格派ジャズ喫茶にして、1階はやや音量を抑えて会話もできる場にした。
 「とにかく人に恵まれた」。開店から数年後、京都に住んでいた世界的なベーシスト、ゲイリー・ピーコックさんの京都ライブを実現させると、著名な演奏家との交流が広がった。
 1973年、店のピアノを最初に弾いたのは、後に京都賞を受賞したピアニストの故セシル・テイラーさんだった。京都に一時住んだというピアニストのチック・コリアさんもクリスマスに店で演奏を披露した。近くに住んだ五木寛之さんは何度か来店し、小説「燃える秋」(78年)の舞台として描いた。
 忠文さんは今も毎月、大阪の中古レコード店に通い、15枚前後を購入する。「まだまだジャズ喫茶のおやじだなってわれながら思います」。店に置ける量は5千枚が限界のため、店であまりかけないレコードを知り合いに譲り、新たに購入した盤を店内の棚に入れる。「店には鮮度が大切。空気が動いていないと支持されない」と語る。
 「30軒はあった」という京都のジャズ喫茶は数えるほどに減る中、ライブも催すなどで生き残ってきた。数年前にニューヨーク・タイムズの記事で店が紹介されたことで欧米からの観光客が増えたという。
 「日本で独特のジャズ喫茶という文化が世界から注目されている」と喜ぶ。熊代さんの娘が継ぐ準備をしているといい、「これからも愛される店であり続けたい」と忠文さんは話す。