■情報公開時、大半が黒塗り

 優生保護法(1948~96年)下での強制不妊手術に関して公文書の大半を黒塗りで開示した滋賀県の決定について、県の公文書管理・情報公開・個人情報保護審議会は28日、京都新聞社の審査請求を受け、被害者情報以外はほぼ全面開示するよう求める答申を知事に提出した。執刀医や病院の名前を含み、社会の公益性が高い情報について公開の必要性を強く打ち出す画期的な内容。個人情報の壁に阻まれ実態が不明となっている同問題の解明に道を開くだけでなく、行政の情報開示に一考を促すものとして注目されそうだ。

■執刀医名など 公益性を評価

 答申に法的拘束力はないが、県情報公開条例は「実施機関は答申を尊重して速やかに裁決しなければならない」と規定する。県健康福祉政策課は「条例は承知しており、今後、方針を検討する」としている。

 審議会が公開と判断したのは、県が非公開とした65、68~71、76年度の県優生保護審査会への提出書類のうち、カルテ記載の病歴、被害者の年齢や職業、生活状況、発病後の経過、病状、遺伝関係情報▽断種の適否を決めた県審査会委員の名前と職名▽審査を申請した医師の所属病院と申請に至った動機▽手術を行った医師の名前と所属病院-など。強制不妊手術は当時、特定の疾患や障害を理由に公益上必要という医師の判断の下、審査会の決定を経て行われていた。

 答申は、公開理由について「(問題は)人権侵害の疑いに関する社会的関心が非常に大きく、事実解明が待たれている」と指摘。被害者への一時金支給法が4月に成立したことを踏まえて、「プライバシーとして法的な保護に値する範囲は一般的な場合と比べて相当程度に縮小する」と結論付けた。

 一方で、被害者と家族の氏名と住所、審査を申請した医師の氏名は「特定の個人を識別することができる」として非公開とした。

 県は京都新聞社の情報公開請求に対して昨年1月と同4月、「個人情報の保護」を理由に非公開とした。審査請求を受け、県は横田光平同志社大教授が会長を務める審議会に諮問。弁護士や学識経験者、公募委員ら計7人が審議していた。

■経過判明に意義

 情報公開に詳しい曽我部真裕京都大教授(憲法)の話

 強制不妊手術に至る具体的な経過が明らかになるため、10人分とはいえ意義がある。プライバシー保護と公共の利益を比較し、氏名や本籍地を非公開としつつ、カルテ記載の病名や病歴などを公開すべきとした点は重要で、他府県の情報公開にも影響を与えるのではないか。執刀医の氏名公開にも意味はあるが、条例に「個人を識別する情報は非公開」という規定があり、条例の解釈を巡って異論が出る可能性もある。また、滋賀県が当初、情報を非公開としたことについて、審議会は根拠を明確に示していないと指摘しており、県の手続きはずさんだったと言えるのではないか。