■滋賀県文書の黒塗り、審議会否定

 優生保護法関連文書について、ほぼ全面的な公開を求めた滋賀県公文書管理・情報公開・個人情報保護審議会による28日の答申は「個人情報の保護」を理由に黒塗りを正当化した県の判断をことごとく否定した。同法に基づく強制不妊手術問題は、公的機関に当時の資料が残りながらもプライバシーを理由に情報が開示されない実態がある。「国による性暴力」とも言える同問題の事実解明に向け大きな一歩となる。

■当事者「少しでも知りたい」

滋賀県で保管される優生保護法関連文書。県審議会は県が黒塗りにした多くの部分で開示を求めた

 「踏み込んだ内容で実態解明につながる」と長年同問題に取り組んできた立命館大生存学研究所の利光恵子客員研究員は評価する。「ほとんどの都道府県が公開している審査委員の氏名さえ滋賀県は伏せてきた」

 強制不妊手術問題では、被害の性質から当事者が口を閉ざすケースが多い。公的資料があるにもかかわらず、京都府や滋賀県など多くの府県でプライバシーを理由に多くの情報が公開されず、被害者の生育歴や病歴、家庭の状況、年齢のほか、手術に至る過程などが不明となっている。

 今回の答申では、同問題を「社会的関心が非常に大きい」とした上で、「県の保有する情報は県民の共有財産」という情報公開条例の理念に沿い、黒塗り部分を一つ一つ検証した。

 例えば、断種の適否を審査した県優生保護審査会に提出されたカルテ。病名や病歴、処置の状況などプライバシー情報を記載するが、被害者が特定されなければ非公開とすべきではないと判断した。

 「個人情報」である執刀医名の開示も求めた。「生殖を不能にするという権利侵害の程度が公権力の行使と比較しても甚だしい」。民間の医師でも法の下で公権力を行使する場合、公務員と同様に氏名が公開できると結論付けた。医師が所属する医療機関名も「社会的評価への影響がないと言い切れない」としながら、知る権利や社会的関心を優先した。

 一方で、審査の申請医師は「手術の端緒だが、手術そのものではない」として非公開を妥当とした。被害者情報も権利侵害という点から非開示にした。

 答申を受け、資料が開示されれば同問題の解明が進むことが期待される。利光研究員は「どういう病状の方がどういう状況で手術を受けさせられることになったのか、個別・具体的に分かる」と話す。

 他府県の当事者も関心を寄せる。「自分のことでなくても、他府県であっても、優生保護の実態を少しでも知りたいと思ってきた」と宮城県の70代の飯塚淳子さん(仮名)。16歳の時に不妊手術を強いられたが、審査会資料は県に廃棄され残っていない。「私たちは人生を奪われた。残っている資料は隠さず全部明らかにしてもらいたい」と願う。