外出自粛が緩和され、街に少しずつ活気が戻ってきた。長い巣ごもりから抜け出して散策中、お寺の掲示板に貼られた墨痕鮮やかな一文が目に留まった▼<たまには心も雨やどり><欲張らないで生きると楽になる>。新型コロナウイルスの感染拡大で社会が沈滞する今、なるほどとうなずく。自粛疲れの心にしみる一言をメモに書き写す▼門前に掲げた標語は「掲示伝道」と言われ、仏の教えを伝える大切な手段だ。仏典の引用や高僧の戒めなどは少し難解ながらも含蓄がある。ユーモアがあふれ心にすっと響く珠玉の名言に出合うと、うれしくなる▼<笑って聞いてたあの言葉。亡き人からの励ましと聞こえて不安な私が安心となった「だいじょうぶだぁ」と>。コロナ禍の犠牲になった、タレントの志村けんさんのギャグには、先の見えない不安を笑い飛ばしてしまう力がある▼<何ごとも人間の知恵では行き詰まる>。確かにそうだ。世界中を席巻した歴史的な疫病に対して人間は無力、非力なのかもしれない。でも<つまずきも一つの前進。悩みも一つの活力>。そうであると信じたい▼京都市内では大本山も街の寺院も掲示伝道に知恵を競い合うが、休業中?の掲示板も結構多く、残念だ。こんな時こそ疲れた心をときめかせる言葉を発信してほしい。