上村松園「長夜」

<ミュージアムのちから コロナ禍に考える>

 福田美術館は2019年10月、京都市右京区に開館した。副館長竹本理子(あやこ)さんは準備をしていた頃、多くの美術館関係者に「難しいよ」と言われた。京都は文化ゾーンが東山地域に集中している。しかも京都の人は何事も3年は様子をみる。西にできた新しい美術館に足を運んでもらうのは至難の業だと。

 開館記念展は秋の行楽期で、観光客や外国人客の来館に期待したが、むしろ第2弾の展覧会「美人のすべて」の方が冬の閑散期にも関わらず好調だった。数多くの作品が並んだ日本画家上村松園を今も「松園さん」と呼び、親しむ地元の京都の人たちが訪れてくれたからだ。

 同館は消費者金融大手アイフルの創業者福田吉孝さんが04年ごろから構想し、嵐山という地に似合う京都や東京画壇の作品を中心に集めた。行灯(あんどん)の明かりで読書を楽しむ若い女性とその姉の語らいが聞こえそうな松園「長夜(ちょうや)」、斬新な構図と旅路の一服の和やかさが好対照を見せる木島櫻谷(このしまおうこく)「駅路(うまやじ)之春」など、目を楽しませるものが多い。

木島櫻谷「駅路之春」(左隻)

 「美人のすべて」展は、女性たちのたおやかな物腰、いきいきした表情が見る人を引きつけた。広報担当の中島真帆さんは来館者から「京都に住んでいるが、おかげで10年ぶりに嵐山に来た」という声を聞いた。

 手応えを得て、第3弾の「若冲(じゃくちゅう)誕生」展は大幅な入場者増を予測した。伊藤若冲は近年人気を集めており、しかも、昨年発見された最初期の作品「蕪(かぶ)に双鶏図」が展示されるとあって事前の反応も大きかった。大型連休とも重なることから「スタッフの増員など、混雑対策ばかり考えていた」(中島さん)。

 ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で「美人のすべて」は臨時休館で予定より1週間早く終了。「若冲誕生」は1週間延期して開幕したが、すぐに再休館せざるを得なかった。ただ、マイナスだけには捉えなかった。開館から半年間、全力で走ってきただけに業務を整理し落ち着くための充電期間になった。図録やグッズの通信販売、若冲の作品を使ったオンライン会議用背景の提供などをしつつ新企画を練った。「自分たちの美術館ができたと喜んでくれる方もいる。よりよい展覧会を提供していきたい」と竹本さんは意気込む。

 

 福田美術館 「若冲誕生」展は5月下旬に再開し、7月26日までに会期を変更した。奇才、天才と称されることの多かった若冲の人間的な葛藤に着目した展示になっている。このほか、竹本さんがお薦めの館蔵品は葛飾北斎「大天狗(てんぐ)図」。クモの巣を背景にモミジを羽うちわで追う天狗の躍動的な構図は米コミックのスパイダーマンを連想させる。北斎80歳の意欲作だ。京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町。075(863)0606。