日本料理店から出火し付近の住宅など8棟が焼けた火災現場(2018年5月、京都市東山区)

日本料理店から出火し付近の住宅など8棟が焼けた火災現場(2018年5月、京都市東山区)

火災からの復旧に向けて大工らと話し合う所有者の市村さん(中央)。路地の風情を保ちながら建て替えを進める(京都市東山区祇園町南側)

火災からの復旧に向けて大工らと話し合う所有者の市村さん(中央)。路地の風情を保ちながら建て替えを進める(京都市東山区祇園町南側)

 2018年に京都市東山区祇園町南側の日本料理店から出火し、付近の住宅など計8棟が焼けた現場で、復旧計画が進みつつある。通り抜けできない路地奥にあり、建築基準法上では建て替えが困難な場所だが、路地全体を一つの敷地とみなす特例制度の適用を受け、再建ができるようになった。

 火災は2018年5月12日、日本料理店「千花(ちはな)」の調理場から出火して起きた。けが人はいなかったが、住宅を含む8棟延べ計約144平方メートルが焼損した。千花は、飲食店の格付け本「ミシュランガイド京都・大阪」で9年連続三つ星を獲得した有名店で、路地奥の隠れ家的なスポットとしても人気だった。
 店舗があった土地と建物の所有者の市村三吾さん(78)は突然の悲報に途方に暮れた。隣接する住宅や店舗計6棟はおいの道久さん(46)と共同で所有し、以前から店舗には「火事だけは気をつけて」と言っていたという。再建には数千万円かかるが、路地は幅1・1メートルと狭く、法律上個別での建て替えは不可能。収益を重視し、複数の敷地をまとめてビルを建てることも考えたが、「風情ある路地を残す責任もある」と思い直した。
 市に相談したところ、「連担建築物設計制度」を活用すれば、路地の風情を保ったまま、個別の建て替えや修繕をできると知った。行き止まりの場所に扉を設置し、2方向への避難を可能にするなど防災性を向上させ、今年2月に市の認定を受けた。10月から工事を始め、21年秋ごろに路地全体の再生を目指している。
 市内では同じように建物の建て替えできない路地が約3410カ所あり、市関係者から「路地再生のモデルケース」と期待されている。
 市村さんは「祇園町では風情ある路地がビルに変わり、京都らしい町並みが失われつつある。保全を所有者の熱意に頼るのは限界がある。所有者が路地を残した場合に税金を軽減するなどの措置を設けるべきでは」と話している。

≪連担建築物設計制度≫

 1999年度に導入された建築基準法に基づく制度。区域内の地権者が建物の規模や安全対策について一定のルールを定めた場合に、路地全体を一つの敷地とみなすことで、路地奥での建て替えや大規模修繕が可能となる。地権者の合意形成の難しさや制度の認知度不足で、京都市内では祇園町の事例も含め9件しか適用事例がない。祇園町のケースでは地権者が2人だけだったため、円滑に進んだ。