提訴の方針について説明する本庶京都大特別教授(5日午後、京都市左京区・京大)

提訴の方針について説明する本庶京都大特別教授(5日午後、京都市左京区・京大)

 がん治療薬オプジーボの開発に関わって2018年のノーベル医学生理学賞を受けた本庶佑[ほんじょたすく]・京都大特別教授(78)は5日、同薬を製造販売する小野薬品工業が米製薬会社と争った別の訴訟で本庶氏が協力したことに対する適正な配分がないとして、小野薬品を相手に約226億円の支払いなどを求めて大阪地裁に提訴すると表明した。京都大の誇る輝かしい研究の果実がなぜ、法廷での対立に至ったのか。背景には、オプジーボの開発で生じた本庶佑氏と小野薬品工業の「産学連携」のこじれがある。

 今回の提訴は、小野薬品が米製薬大手との間で争った訴訟における本庶氏の協力への対価が低いと訴えるものになる。本庶氏側は小野薬品が配分した金額について、協力を依頼された2014年時点の約束と比べて極端に低いと主張する。本庶氏の小野薬品への「不信」に端を発した提訴となるが、対立の原因はさらに時間をさかのぼる。

 本庶氏と同社は、オプジーボの特許に関わる契約を06年に締結した。「小野薬品とは複数のプロジェクトを一緒にしてきており、信頼できると思っていた」という本庶氏は、弁護士を入れずに契約した。当時の京大には十分なノウハウはなかった。「(本庶氏には)契約が公正か、実質的に判断はできなかった」(代理人弁護士)という。

 本庶氏によると、契約を結んでから数年後、同契約に基づく特許への対価が不当に低いという指摘を周辺から受けた。以来、本庶氏は正当な対価を得るため小野薬品との交渉を求めてきたが、14年にも再び「不信」を抱かせる事態が生じたことになる。

 本来はウィンウィン(相互利益)の関係になれるはずだが、両者の対立はなぜ約10年にわたって解消しなかったのか。理由を問われた本庶氏は答えた。「向こうに誠意がない。私が一番不可解に感じている」