今月末に、米国の首都ワシントンで開催される予定だった先進7カ国首脳会議(G7サミット)が、9月以降に延期されることになった。トランプ米大統領が、明らかにした。

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の収束が見通せず、これを理由にドイツのメルケル首相が参加を辞退したこともあって、予定通りに開催するのは難しいと判断した、とされている。

 感染者、死者とも世界最多の米国だけに、うなずける理由といえよう。

 しかし背景には、これまでのようなG7なら、開きたくないというトランプ氏の思惑が、あるようにも見受けられる。

 G7は、議長国順にフランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダの主要7カ国と、欧州連合(EU)の首脳が毎年集まり、世界の情勢が反映された課題について話し合い、合意事項を宣言にまとめる国際会議である。

 冷戦時代は西側の「大国クラブ」とされ、参加国は民主主義、法の支配、人権尊重などの基本的価値を共有してきた。

 ところが、今年の議長となるトランプ氏は、G7の延期とともに、その枠組みについて「非常に時代遅れだ」と述べ、ロシア、韓国、オーストラリア、インドの首脳も招いて、拡大開催したい意向を示した。

 ロシアは冷戦終結後、G7に加わり、一時は「G8」を形成したが、2014年にウクライナ南部のクリミア半島を一方的に編入し、参加国の反発から追放された格好となっている。

 国際法を軽視し続けるロシアは参加できないとする声が、カナダなどから上がっている。

 これでは、トランプ氏はG7の基本的価値を共有していない、と指摘されよう。大変、残念なことである。

 大統領就任後、G7で議題となったのは、地球温暖化防止に向けたパリ協定からの米国離脱や、巨大IT企業への課税などである。「自国第一主義」の立場からは認められない主張もあり、不満だったとみられる。

 だが、そうしたことも話し合うのが国際会議である。

 会議を通して国際協調に努めていくことが、将来的には自国の利益にもつながると、考えてもらいたい。

 参加国の拡大に関して、ホワイトハウスの広報は「将来の中国にどう対応するかを話し合うため」と説明した。

 米国は、貿易、新型コロナの感染源、香港への国家安全法制導入などを巡って、中国と激しく対立している。

 新型コロナで大きな影響を受けた国などを集めて、中国への圧力を強化しようという意図は明らかだ。

 「中国包囲網」となる新たな枠組みをつくり、これまで先進国としての役割を果たしてきたG7を変質させるのなら、あまりにも独善的といえる。考え直してほしい。

 トランプ氏は、G7の開催時期を、11月の米大統領選後とする可能性にも言及している。この際、自国の民意を確かめてから、国際社会に向き合うのが、よい選択ではないか。