天王山、三日天下…。「たとえことば辞典」(中村明著)には明智光秀がよく登場する。「敵は本能寺にあり」は「真のねらいは意外なところに隠されているという意味」とある▼「本能寺の変」が起きたのは1582(天正10)年6月2日早朝。光秀が京で主君の織田信長を急襲した。小学6年で習う出来事だが、出陣した地は丹波亀山城(亀岡市)だった▼光秀が主人公のNHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」もあって、同僚と進軍ルートを夜通し歩いてみた。亀山城跡をたち、老ノ坂を越えた。桂川を渡り、洛中の本能寺跡に着いたのが明け方。へとへとになったが、朝駆けができる絶妙な距離だと実感した▼今年、京滋の光秀ゆかりの地はにぎわうはずだった。「逆臣」だけでない人物像や地域史に光が当たる期待もあった。それが新型コロナウイルスという意外な敵に襲われ、観光どころではなくなった▼集客施設は軒並み休館し、催しは中止に追い込まれた。大河ドラマも制作できず、7日で放送が中断する。やはり光秀はツキがないのか▼緊急事態宣言下の約1カ月半は、感染拡大を防ぐ「天王山」だった。戻りつつある日常を「三日」で終わらせるわけにはいかない。「コロナ後」はブームに頼らない地域の盛り上げ方を探っていかなくてはならない。