京都市は、国に移転を要望している京都刑務所(山科区)について、移転が実現した場合の跡地活用案をまとめた。大学や企業の集積など五つの機能・施設の案を示し、複数を選択するとしている。

 移転を巡っては昨年10月、刑務所を所管する法務省の幹部が前向きに検討する意向を伝えてきたと門川大作市長が明らかにした。

 ただ、移転には地元住民の間にも賛否があるうえ、移転先の確保や巨額の費用をどうするかといった議論は白紙のままだ。

 法務省の理解を得るには、説得力のある具体的なまちづくりの未来像を示したうえで、冷静で丁寧な議論を進める必要がある。

 活用案は本年度内に策定する山科区のまちづくり戦略に盛り込んだ。望ましい機能として定住促進、産業創造、教育・交流、文化・ものづくり・観光の創造、安全・安心の向上の5項目を挙げた。

 この中から複数の機能を選択して導入することで、区全体を活性化させるという。

 京都刑務所は敷地面積が10万7千平方メートルと広大なため、跡地に多様な機能を持たせることで相乗効果が期待できる。誘致した企業が雇用を生み出し、周辺での定住につながる。区内の大学や企業などとの連携が新たな事業や交流を生み出すことも考えられる。

 市営地下鉄東西線をはじめ、新年度から無料になる京都高速道路新十条通、国道1号バイパス整備構想の候補ルートに近く、交通の利便性が高い場所でもある。通勤通学者や観光客などの昼間人口の拡大を図りたい狙いもあろう。

 山科区は働き盛りの子育て世代で転出超過が目立つ。市が危機感を持ち、中心部で残り少ない大規模開発用地として京都刑務所に注目したことは一定理解できる。

 ただ、1927年に現在の場所に移った京都刑務所には、受刑者の社会復帰に向け、地域に溶け込もうと努力を重ねてきたとの思いがある。現在の静かな環境を守りたいと、移転に反対する住民の声も無視するわけにもいかない。

 最も疑問なのは、移転先の検討が具体的に進んでいるのか、費用負担はどれぐらいになるのかなど肝心な情報が、ほとんど明らかになっていないことだ。

 跡地活用を考える議論の前提があいまいなままでは、戸惑う住民も多いのではないか。

 地元はもとより、民間も含めた京都全体のしっかりした判断につなげていくには、十分な情報提供が欠かせない。