原田さん。こんにちは。

私はあと1年で退職するのですが、退職後に何をすべきか悩んでいます。

これまで42年間、教員として仕事をしてきました。自分なりに、結構やりきった感はあり、残りの1年間で教員生活42年の集大成を見せて、教員の仕事を終えたいと考えています。

そこで相談です。退職後に自分が行いたい事は一杯ありますが、生活もしていかねばならないですし、何か良いアイデアは有りますか?

何歳まで生かせてもらえるか分かりませんし、今はもう昔のようには身体も動きませんが、気持ちだけは学生気分です。

今まで支えてくれた家内にも感謝を表したいし、本当に迷っています。

よろしくお願いします。

(64歳・男性)

 

 

 退職を来年に控えた人生の大先輩からのご相談を頂いた。なんと言う光栄。しかも教員という仕事。

 職種においても本当に先輩だ。64歳、42年のキャリア。僕なんかが何か言えるだろうか。しかし、相談を受けたからには、失礼を承知で答えてみようと思う。

 このハラダイス相談室が始まり、いろいろな相談に答えるなかで気付いた事がある。それは、往々にして答えは、質問の中に書かれているという事だ。

あなたは加齢による体の衰えはあるものの「気持ちだけは学生気分」だという。自力で生活をしていきたい、自分のやりたい事はいっぱいある、奥さんに感謝を伝えたい。何をすべきかは明確だ。あなたの人生があと30年与えられて90歳を超えたとしても、おそらくあなたは、自分のすべきことを持ち続けているだろう。

 では、なぜ、この相談は送られてきたのだろう。あなたの悩みは、何をすべきかではなく、「すべきことの全てはできないかもしれない」ということなのではないだろうか。あなたの言う「学生気分」とは、諦めない心のことであり、新しい事を始める時に、期待が不安を上回る気分のことを指しているのではないだろうか。

 あなたは、おそらく大学を出てすぐに教員になった。今回の退職はそれ以来の次の世界への挑戦だ。あの頃、やってみたいと思ったことや、出来るだろうかと不安に思った仕事への思いは、今や過去となり、それらの答えと結末をほとんど知っている。
その経験を基に次への挑戦をイメージする時、あなたは何を不安に感じているのだろう。記憶力や体力の低下だろうか。残された時間は学生時代から社会人へと飛び込んだあの頃より、少なくなっただろうか。

 僕は思う。ただ毎日があるだけなのだと。たとえ、昨日出来たことが出来なくなる日が来たとしても、今日できることを一生懸命やりながら生きていくことは、何歳になってもどんな状態の時も変わらない。必要なことは、きっと、毎日、今日の自分を受け入れることだ。若い時は、明日の自分を思い描く事が「今日すべきこと」だったりする。でも年齢を重ねると、昨日の自分を諦める事が「今日すべきこと」になったりもするのだろう。体力の代わりに知恵を携えて、今の自分を受け入れながら、毎日を精一杯生きている人をとても魅力的な大人だと、僕は思う。

 そして、どんなに歳を重ねても、大胆に未来を描けばいいのだ。途中で終わってしまうとしても、今日のために明日への想像が必要なら、大いに想像すればいいのだ。いつか必ずやってくる人生の終わりは自分で決めるべきではない。そのタイミングは神様にでも任せておけばいいのだ。

 最後にあなたの考えるあなたのすべき事をもう一度思い出してみよう。

 自力で生活をする、いっぱいある自分のやりたい事をする、奥さんに感謝を伝える。
 僕の意見としては、奥さんへの感謝は退職を待たずに今日から伝えてほしい。それ以外は、できる範囲で毎日ゆっくり積み重ねていけばいいと思う。全てができなくてもいい。それが人生だ。少しでもできた事を喜べばいい。今日の自分を褒めることができるなら、人生はいつも幸せなのだと思う。

 ご相談ありがとうございました。年齢を重ねることへの不安は、その時が来なければ本当には分からないことは承知で、自由に書かせてもらいました。それぞれの健康状態や経済状態や時々の社会情勢で、その深刻さは全然違ったものなのだと思います。けれど、先を行く先輩として、格好いい背中を見せ続けてくれるとうれしいです。

「年波サーファー」 作詞作曲:原田博行

photo by かつらかづみ

昔できたことが出来なくなった
こんな自分にがっかりだ
老眼鏡片手にあなたが笑う

寄る年波をいなして波に乗る
そんな姿もかっこいいぜ
老いも憂いも惨めさも全て
大きな波だと楽しめ年波サーファー