休校で静まり返る滋賀県内の小学校教室。黒板には最後の登校日の日付が記されたままだ(4月13日)

休校で静まり返る滋賀県内の小学校教室。黒板には最後の登校日の日付が記されたままだ(4月13日)

入学式などがあった4月8日夜、長浜市内の保護者に届いた、明日からの再休校を知らせるメール

入学式などがあった4月8日夜、長浜市内の保護者に届いた、明日からの再休校を知らせるメール

 滋賀県長浜市木之本町の会社役員の男性(41)夫妻は4月8日、晴れて長男の入学式を迎えた。新たな第一歩を踏み出す息子を見守る晴れやかな気持ちは、たった数時間後に暗転した。

 「明日から市内小・中・義務教育学校を一斉臨時休業とさせていただきます」。午後9時、市教育委員会から妻に届いたメールに、男性は「びっくりして、ぽかんとなった」。入学式で、そんな話はまったく出なかった。あまりに性急な決定。「学校生活を知らない子を家でどう過ごさせたらいいのか」

 この日は滋賀県内の多くの学校で始業や入学式があった。新型コロナウイルスの感染拡大による政府の要請で、3月初旬から県内の学校は一斉休校になっており、約1カ月ぶりに子どもたちの笑顔が校舎に戻ったばかりだった。

 多くの保護者や学校関係者が急転直下の再休校方針に衝撃を受けた8日。舞台裏では何が起こっていたのか。

 県庁内は緊迫感に包まれていた。4月に入ると連日、県内で感染者が確認されるようになり、7日には感染経路不明の感染者が4人も確認された。三日月大造知事は8日午後、急きょ会見を開いた。「非常に重い判断」と述べ、5日後の13日から県立学校を再休校すると発表した。土日を挟むので残された再開期間は実質2日のみ。最終決定は会見のわずか1時間前だった。

 同じ頃、長浜市の藤井勇治市長は県立学校の再休校決定の知らせを聞いた。まだこの段階では、市内の小中学校の再休校までは考えていなかったという。

 しかし、しばらくして市の防災危機管理局長から電話で再休校の相談を受けた。午後7時には教育長が市長室を訪れ、「明日9日から休校したい」と切り出した。市内で1人の感染者が確認されていたことに加え、市内の小中学校で複数の発熱による欠席者も出ていた。切羽詰まった訴えに「迷ってはいられない」と藤井市長。市新型コロナウイルス感染症対策本部会議のメンバーのうち、正副市長と教育長、防災危機管理局長の4人のみの異例の合議で、明日からの休校を決定した。

 この日、長浜や近江八幡、守山など4市3町が「市内で感染者が確認された」「近隣市で感染者が確認された」などの理由で小中学校の再休校を決定した。この流れは止まらず、翌9日は彦根など3市3町が続き、10日までに県内全19市町で8~14日からの再休校が決まった。

 三日月知事は6月2日、定例記者会見で県立学校の休校判断を振り返った。「子どもたちへの感染を防ぐ最善の判断だった」としつつ、「できれば学びの機会は一番最後まで開いた状態で保障してあげるべきだったのかもしれない」と打ち明けた。県は今月、感染対策で実施したさまざまな施策の検証を行う。

 これまで国民が経験したことのない感染症への恐怖に襲われた新型ウイルスの感染第1波。地域によって感染状況に差がありながらも、全国で画一的な休校判断が目立った。

 長浜市は、市教委が学級や学校単位の閉鎖に関する基準の作成に取りかかっている。一方、ある市の教委幹部は「休校判断は市町に委ねられているが、近隣市町の状況を確認して判断しているのが実態。県と連動して休校した方が感染リスクも下がるので、休校判断については、県教委から強制力のある要請を出してほしい」と打ち明ける。

 第2、3波が来た時、子どもたちの学びの場と安全をいかに守るのか。「右にならえ」でいいのか。各自治体の判断が問われる。