イラスト・冨田望由

イラスト・冨田望由

<いきものたちのりくつ 中田兼介>

 道具は、私たちの能力を広げ、できないことをできるようにしてくれます。そして、何かができるようになるのは楽しいものです。

 動物にも暮らしの中で道具を使うものがおり、有名なものにカレドニアガラスがいます。木に開いた穴の奥のように、くちばしが届かないところにエサを見つけると、小枝などを自分でかぎ状に曲げたものを使い、ほじくり出して食べるのです。

 カレドニアガラスは道具を使うとどんな気分になるのでしょう? 米ハーバード大のダコタ・マッコイさんたちは、テーブルの片方の端にエサのたくさん入った箱を置いたり、もう片方の端に少ししかエサの入っていない箱を置いたりしてカラスを遊ばせ、箱の場所とエサの量に関係があることを覚えさせました。

 その後、カラスはエサがたくさんあった場所と少ししかなかった場所のちょうど真ん中に箱があるのを見せられます。ですがこの箱の中にエサがどれくらい入ってるかはわかりません。カラスはどうするでしょう? 「楽観的」にエサがたくさん入っていると思えば、さっと近づくでしょう。たいしたエサは入っていないと「悲観的」に思えば、すぐに近づかないでしょう。近づく速さを調べれば、カラスがどのくらい「楽観的」に箱を眺めているかがわかるのです。

 このテストを、道具を使ってエサを取った後のカラスにしてみたところ、道具を使わなかったときより、「楽観的」になっていたそうです。道具を使った後のカラスは、きっと楽しく良い気分だったのでしょう。

 楽しければ、もっとやりたくなるのは世の道理。子供の頃、自転車で速く走れるのが楽しくて、気がついたら、ここどこだよ! と焦るほど遠くまで行ってしまったことを覚えています。カレドニアガラスも道具を使うほどにもっと使いたくなって、それで、動物界で一、二を争う道具使いになったのかもしれません。(京都女子大教授)

◆中田兼介 なかた・けんすけ 1967年大阪府生まれ。京都大大学院で博士号取得。著書に「クモのイト」「びっくり!おどろき!動物まるごと大図鑑」など。「図解 なんかへんな生きもの」を監修。