日本人拉致問題で北朝鮮が被害者の再調査を約束した2014年5月のストックホルム合意から、6年が過ぎた。

 だが、日朝関係は足踏み状態が続いている。北朝鮮は再調査の実施をほごにしたままだ。問題解決への道筋は見えない。

 被害者と家族の高齢化が進む中、横田めぐみさんの父、滋さんが87歳で亡くなった。被害者家族連絡会の初代代表となり、運動の象徴的存在だった。

 今年2月には、被害者の有本恵子さんの母、嘉代子さんが94歳で死去している。政府が拉致被害者として認定している17人のうち、帰国していない12人の親で健在なのは2人だけとなった。

 残された時間は限られている。救出を急がなくてはならない。

 滋さんの死去を受け、安倍晋三首相は「断腸の思い」と述べた。長期政権となった間、目に見える成果がなかったことは重く受け止めなくてはならない。

 これまでの取り組みを検証し、戦略を立て直す必要があるのではないか。

 02年の日朝首脳会談で北朝鮮側は拉致を初めて認め、被害者5人の帰国が実現した。

 だが残る12人については8人死亡、4人未入国と主張している。めぐみさんに関しては、提出した遺骨から別人のDNA型が検出されるなど多くの疑問が生じた。

 その後、安倍政権が核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に圧力を強め、日朝関係は冷え込んだ。

 一方で首相はトランプ米大統領との関係をてこに、米国の圧力で拉致問題を動かそうとした。

 シンガポールでの米朝首脳初会談から、あす12日で2年になる。現状ではトランプ氏自身が北朝鮮への関心をなくしているように見える。大きな誤算が生じている。

 昨年5月には、方針を転換して安倍首相が「無条件での首脳会談」を呼び掛けたが、北朝鮮は応じていない。

 引き続き米朝対話を後押しするとともに、日本としても直接対話の糸口を探る努力を重ねていく必要がある。独自のアプローチをどれだけできるかが問われる。

 さまざまなルートを通じて、被害者を取り戻すというメッセージを国際社会に発信していくことも大切だろう。

 滋さんの妻、早紀江さんは会見で「どこまで頑張れるか分からないが、必ず取り戻す」と決意を語った。その思いに応えなくてはならない。