政府が、性犯罪と性暴力への対策強化方針を決定した。仮釈放と執行猶予中の人を軸に、衛星利用測位システム(GPS)端末の装着義務付けを検討するという。

 性犯罪や性暴力は「魂の殺人」ともいわれ、被害者の心身に長期にわたって深刻な影響を及ぼす。監視の強化で卑劣な犯罪を防ぐ一定の効果が見込めるとの声もある。

 ただ、仮釈放や執行猶予中とはいえ、有罪確定者に新たな罰を科すことになりかねない。人権侵害との批判があるほか、更生を妨げるとも指摘されている。社会全体で慎重に議論する必要がある。

 方針は、性犯罪の加害者は多くが被害者と顔見知りだとの調査結果もあるとした。同じ加害者によって犯罪・暴力が繰り返される例が少なくないとして、2年程度をかけて海外の事例を調査し、GPS装着の義務化の可否を判断するという。

 欧米や韓国など多くの国がGPS監視を導入している。日本でも宮城県が2011年に性犯罪歴がある人にGPS端末を常時携帯させる条例を検討したことがある。

 だが、過度に監視に頼る手法には危うさがある。犯罪の抑止効果ばかりが強調されれば、漠然とした社会不安を根拠に、監視対象が薬物依存者などにも次々と広がるおそれがある。

 犯罪から自分の身を守る対策も重要だ。

 方針は幼少期からの教育も柱に据え、水着で隠れる部分は「プライベートゾーン」として他人に触らせないことや、会員制交流サイト(SNS)を通じた被害の危険性を教えることなどを盛り込んだ。性を人権の観点から捉え、学校教育の中にどう位置づけていくのか、具体策が求められよう。

 被害者の救済や支援も欠かせない。

 17年の刑法改正で、性犯罪は容疑者の起訴に被害者の告訴を必要とする「親告罪」ではなくなった。だが、強制性交罪の成立に「暴行・脅迫」を必要とする要件は残ったままだ。

 明白な暴行を受けなくても、恐怖で抵抗できないことは少なくない。被害者や支援団体からは要件の撤廃を求める声が上がっている。

 世間の偏見を恐れ、被害を打ち明けられずにいる人は多いとみられる。まして、要件が厳格では告訴を断念する被害者も出かねない。方針で政府は刑法改正議論の「検討」に触れたが、一刻も早く被害救済につなげられるよう、撤廃に向けて早急に動くべきだ。