京都産業大の学生の集団感染について記者会見する大城学長(右から2人目)ら=3月29日、京都市中京区・市役所

京都産業大の学生の集団感染について記者会見する大城学長(右から2人目)ら=3月29日、京都市中京区・市役所

 未知のウイルスに対する不安や恐怖は、自分と異なる考えや行動の人、特定の属性への攻撃という形で顕在化した。まっとうな批判や苦情とは質が異なる「言葉の暴力」。増幅する誹謗(ひぼう)中傷や偏見が、くしくも人々の自粛行動に拍車を掛けていたとしたら、それは果たして健全な社会と言えるのだろうか。

 京都市の感染症対策担当の職員が2人、キャンパスを訪ねてきた。3月28日午後、京都産業大(北区)。「卒業生の感染が分かった。行動歴を調べたところ、感染者集団(クラスター)になる可能性がある」。対応した大学の職員に2人は告げた。
 卒業旅行や学外での懇親会などを通して、感染が広まっている恐れがあるとのことだった。大学は、関係する学生らに連絡して状況を確認。当初、感染を把握できていたのは学生2人だったが、その日のうちに新たに1人が判明、他にも感染が疑われる学生が多数いることが分かった。
 「全て明瞭に説明する」。大城光正学長らは決断し、翌29日、市役所(中京区)で門川大作市長も同席した記者会見に臨んだ。
 「京産大でクラスターか」。インターネットニュースやテレビ、新聞が大きく報じると、京産大ではクレームの電話が鳴り続けた。
 4月1日までに寄せられた電話やメールは、毎日100~150件。苦情や問い合わせの中に「大学に火を付ける」「お前ら殺してやる」といった過激な言葉が混じった。
 言葉の暴力はインターネットでもあふれ、「迷惑」など攻撃的な書き込みが増殖した。中には、学生が他地域で発生した感染事例の発生源であるかのように、あおる文言もあった。
 京産大が公表したのは「感染拡大や、情報を明かさないことによる混乱を防止するため、社会的責任を果たす」との判断からだった。だが、その思いと離れたところで情報は一人歩きした。集団感染に関係のない学生にも影響は及んだ。
 「コロナ産業大学。かかってる(感染している)んちゃう?」。京産大4年の20代男子学生は、アルバイト先で同僚の学生から言い放たれた。「ネット上の誹謗中傷そのままの言葉を言われ、ネットが現実とリンクしていると感じた。正直なところ嫌な思いをした」