小原豊雲コレクションの1点。「神と人が一体に表現された土器」 パラカス文化期 紀元前500~同200年

<ミュージアムのちから コロナ禍に考える>

 京都外国語大学国際文化資料館(京都市右京区)は2019年5月、3階にコレクション展示室を新設した。寄贈を受けた中南米古代美術品の作品群「小原豊雲コレクション」を紹介する。南洋の民族資料群「宮武コレクション」も含んでおり、彩り豊かな土器や染織品の数々はまさに「宝の山」だ。ふさわしい展示空間が必要だった。

忍Tobita「夜がやってきた」

 小原豊雲(1908~95年)は、いけばな小原流の三世家元。前衛いけばなを得意とし、世界各地で活動しながら民族資料、特に中南米の古代美術品を集めた。作品群は神戸市東灘区の豊雲記念館に展示されていたが、記念館の休館後、長くラテンアメリカ文化諸国と交流を続けてきた京都外国語大が引き継ぐことになった。

 宮武コレクションは、豊雲と親交の深かった宮武辰夫(1892~1960年)が集めた台湾、フィリピン、メラネシアなどの民族資料だ。宮武は東京美術学校(後の東京藝術大)を卒業して美術教師となるが、原始芸術に興味を抱き、各国に出向いて現地の人と共に生活しながら研究を深めた。

京都外国語大国際文化資料館・3階コレクション展示室。小原豊雲コレクションなどを紹介する。木製の展示ケースは豊雲記念館から移設した

 「コレクションの力は大きい」と南博史館長は言う。その作品がいつ、どんな文化の中に存在したのか。集めた人は作品に何を見いだしたのか。1点だけでなく作品群として見ることで、より深く作品を理解し、背景に想像を巡らせることも可能になる。今後、館の中心となっていく大規模な資料群を迎え入れ、南館長は喜びを表す。

 ただ、それは責任を背負うことでもある。豊雲記念館には長年、作品を守ってきた学芸員がいた。その人は亡くなったのだが、南館長は学芸員室に入った瞬間のことが忘れられない。机や資料など全てが、その人が仕事していた状態のまま残されていた。コレクションは大切に分類・管理され、専門の研究者と解明が進められていた。

 「この情熱を損なわずに引き継がなければ」と考え、南館長は作品群だけでなく、展示環境ごと引き取ることにした。木造の美しい展示ケースや丁寧に作られた解説文を全て移送し、手直しして再利用した。豊雲記念館は現代を代表する建築家、清家清の設計だったが、その趣がよみがえった。引き続き、作品群のより良い管理方法を模索している。

 「本来の場所から歳月を経てここに来た作品を見ると、それが持つ運命の強さを感じ、心を動かされる」と南館長は言う。作品を守り継ぐ人々の努力もまた、芸術の力の一端をつくっていくのだろう。

 

 京都外国語大学国際文化資料館 中南米、イスラム圏などの資料が豊富に見られる数少ない施設。メキシコに渡った異色のアーティスト忍Tobita(本名・飛田忍)氏の作品群も日本最大規模だ。大学は語学系だが学芸員資格課程を持ち、希望する学生は同館で作品の分類などを学べる。「言語という武器を持って世界に出る彼らが、物に触れて得るものは大きい」(南館長)。「言語を通して世界の平和を」の建学理念を、博物館活動を通して実践する。京都市右京区西院笠目町。075(864)8741。