過去のしがらみと決別して出直すのなら避けて通れまい。

 関西電力は、役員らが福井県高浜町の元助役(故人)から金品を受領していた問題を巡り、旧経営陣に損害賠償を求めて提訴する方針という。

 外部の弁護士による取締役責任調査委員会が、八木誠前会長や岩根茂樹前社長ら計5人について、取締役としての注意義務に違反し、会社に計約13億円の損害を与えたと認定したのを踏まえた判断だ。

 原発を推進してきた大手電力と、立地先の有力者、工事業者との長年にわたる癒着が、司法の場で責任追及されることになる。

 関電は、個人株主からの提訴請求を受け、今年3月から調査委を設けていた。筆頭株主の大阪市の松井一郎市長も提訴を主張し、背中を押された形ともいえる。

 森本孝社長をはじめ現経営陣は、「内向き」とされる企業体質の刷新を掲げており、旧経営陣の責任を厳しく追及できるかで自浄能力が試されよう。

 関電は15日の臨時監査役会で意見をまとめ、最終判断する。調査委報告に沿って5人に、一連の調査費用などを加えて13億円を大幅に上回る賠償を求める見通しだ。

 調査委は、元助役からの金品受領や不適切な工事発注、電気料金値上げに伴いカットした役員報酬を退任後に補塡(ほてん)していた問題などで、それぞれの注意義務違反を認定した。

 これらの問題が発覚すれば関電の信用が失墜する可能性を認識しながら取締役会に報告しなかった-などを具体的理由とした。元助役が関係する会社への不適切発注による損害3億6千万円など、具体的な金額も示した。

 だが、経営責任の追及はこれだけにとどまるのだろうか。調査委に先立つ第三者委の調べでは、金品受領は30年以上にわたり役員ら75人にも上る。市民団体などは、会社法違反(特別背任)などの容疑で役員ら12人を告発している。

 企業不祥事の責任追及を巡っては、オリンパスの損失隠しや東芝の不正会計などで損害賠償請求訴訟が起こされ、旧経営陣に巨額賠償を命じる判決が出た例もある。

 関電は、地域の電力インフラとして多数の顧客がおり、一連の損害が電気料金設定を通じて一般利用者にも波及した可能性もある。

 第三者委が根本要因とした「ユーザー目線の欠落」「透明性の軽視」を反省するなら、広く利用者や立地地域への影響と責任にも踏み込み、丁寧に説明すべきだ。