韓国の財閥の女性がパラグライダーで竜巻に巻き込まれて北朝鮮に不時着し、エリート軍人と恋に落ちる-。あり得ない設定の韓国ドラマ「愛の不時着」が日本で人気を集めている▼映画やテレビ番組を定額制で視聴できる「ネットフリックス」で、3カ月以上も視聴トップを争っている。中高年だけでなく20代、30代にも人気で、コロナ禍のなか再び韓流ドラマブームを引き起こした▼人気の秘密は何よりも設定にある。大部分は北朝鮮を舞台とし、頻発する停電や抜き打ちの家宅捜索、ひそかに韓国製品が流通する市場など、軍事境界線近くの田舎町の暮らしを丁寧に描く▼恋愛ものではあるが、喜劇や批評の精神があふれ、友情、信頼、家族といった普遍的なテーマもうまく盛り込んだエンターテインメント性の高いドラマだ▼男女の主人公はもちろん魅力的なのだが、北朝鮮の人々の描き方が秀逸だ。圧制下で他人への無関心を装いながらも豊かな感受性や人情を隠しきれない。人間賛歌の姿勢が視聴者をひきつける▼今月は朝鮮戦争の勃発(ぼっぱつ)から70年、南北統一と交流促進をうたった南北共同宣言から20年の節目の月でもある。時に緊張感も生じるが、朝鮮半島が休戦状態から平和体制へと移行する糸口を見いだせないか。ドラマを見た誰もが願うだろう。