ホームベースと新聞の横幅はどちらが広いか。元プロ野球審判員の山崎夏生さんは試合前、スポーツ新聞を読んでいた同僚に聞かれたことがある。足元に置き、球審の構えをとると「これは2センチくらい狭いな」と直感した▼ベースの432ミリに対し、計ってみると新聞は410ミリほど。ベース上を通る150キロの快速球を点ではなく1本の線として見極める。これがプロの技術だ▼休眠状態となっている日本スポーツ界の先陣を切って19日にプロ野球が開幕する。連夜の6試合がない毎日は味気なかった。これほど開幕が遠く感じたのは初めてだった▼選手が一流の技を披露し、ファンは熱戦を楽しむ。そんな試合に欠かせないのが審判だ。一瞬の判定を巡り、グラウンドで丁々発止の激論を交わす風景も度々あった▼今は機械の目のサポートも得られる時代。映像でのリプレー検証を要求できるリクエスト制度が導入され今季で3年目になる。やがて球審を人工知能(AI)が務める日が来たら、それを野球だと思えるだろうか▼冒頭の山崎さんはブルペンで1万球を見て「審判の眼」を鍛えた。自分の仕事に誇りと責任を持ち、432ミリの感覚をつかむために研さんする。しばらく無観客で現地観戦できないが、テレビ画面を通じプロたちの仕事に注目したい。