睡眠時間は1日1時間程度。入れ替わり泣く赤ちゃんにミルクをあげ、おむつを替える。三つ子を持つ岐阜県の糸井川誠子さん(59)が24年前の日記を読み返したら「逃げ出したい」とあった▼そうした育児の困難さを背景とした事件が昨年、愛知県豊田市であった。母親が生後11カ月の三つ子の次男に対する傷害致死罪に問われた。先日の控訴審判決で一審の懲役3年6月の実刑判決が支持された▼多胎は多くが低体重で生まれる。授乳の方法も回数も1人の新生児とは勝手が違う。被告は日中、集合住宅の4階で独りで育児をしていた。外出もままならず、犯行時はうつ病だった▼市の外部検証委員会は母子保健担当者の支援不足や問題意識の希薄を指摘している。9年前には滋賀県でも双子の母親による乳児の揺さぶり死事件があり、県の検証は関係機関がリスクに気付きながら、判断が不十分だとした▼今回の公判を傍聴した糸井川さんは「支援があれば防げた」と確信する。周囲の助けのおかげで、孤立せずに過酷な時期を乗り越えられたからだ▼「事件は最後にしたい」。多胎育児支援のNPO法人理事長として奔走する。育児の環境や負担感は人それぞれ。SOSのサインを見逃さず、手を差し伸べる専門職や先輩がいればきっと救われる人がいる。