3日間にわたった野外ロックコンサートで最終演奏者が披露したのはアメリカ国歌の「星条旗」だった。一見場違いに思われた演奏を若い聴衆は熱狂的に受け入れた▼1969年に米ニューヨーク州で催された「ウッドストック・フェスティバル」での黒人ギター奏者ジミ・ヘンドリックスの演奏である。黒人への差別や泥沼化するベトナム戦争に対しフェスのテーマである「愛と平和」をひずんだ重々しい音色に込めた。翌年に27歳で早世した後も「ジミヘン」と呼ばれ日本でも人気は根強い▼先月に亡くなった俳優ピーター・フォンダさんが主演した69年の米映画「イージー・ライダー」も似たような問題意識を共有していた。戦後生まれ世代が社会の不条理に怒りをぶつけた時代だった▼それから半世紀、トランプ大統領が掲げる移民排斥に米国の若者たちは激しく反発する。遠く離れた香港でも自治の保障を求めた民主派や学生のデモが続く▼今どきの若者言葉に「エモい」がある。英語のエモーショナルに由来し「心を動かされるようだ」などの意味を持つ▼大人より長く生きる分、より良い未来を願う欲求が若い人たちには強い。その欲求がいつの時代も彼らを突き動かす。ジミヘンが存命ならどんな演奏で今の若者の「エモさ」を後押しするだろう。