ラグビーがアパルトヘイト(人種隔離)で分断された南アフリカを一つにすることに一役買った。白人と黒人の歩み寄りを促そうと、当時のマンデラ大統領が力を注いだのが1995年に自国開催したW杯だ▼映画「インビクタス」では、白人女性が黒人の子どもに南アの代表ジャージーを手渡そうとして断られる場面がある。90年代まで、ラグビーは裕福な白人の象徴でもあった。人種の壁を乗り越え、チームが世界頂点に駆け上る道のりが映画では描かれる▼前回W杯で、南アから大金星を挙げたのが日本だ。20日に開幕する今大会は日本代表31人うち外国出身者が15人を占め「ON(ワン)E TEA(チーム)M」をテーマに掲げる▼体をぶつけ合う格闘技のような試合の終了を「ノーサイド」と呼ぶ。それぞれのサイドで闘うが、終われば敵も味方も区別はなくなるとの意味がある▼4年前、南アは敗北の屈辱を味わいながら日本をたたえた。それは、互いに痛みを知るからこそだろう。ノーサイドは敵意を友情に変える▼人種対立から「虹の国」を目指して南アが一歩を踏み出したように、スポーツが時代を動かすきっかけになることもある。激闘を終え、国籍を超えた仲間たちが肩を組んで笑っている―。多様性を認めつつ一丸となって闘う日本の強さを見せてほしい。