「ちゃぶ台返し」のちゃぶ台を知らない若者が多いと聞く。折り畳み式の食卓で、これを囲む語らいはもう小津映画の中だけの世界か▼ならば「お茶の間」はどうだろう。家の洋風化に加え、単身・少人数世帯の「孤食」。家族そろってもスマホで個々の時間を過ごす。こちらも死語への道はそう遠くない▼お茶の間がにぎやかな頃の米国ドラマがNHKBSで放映されている。「大草原の小さな家」である。西部開拓時代、移住しながら多くの困難を乗り越え、成長する一家を描く。家族思いの父と芯の強い母、三姉妹を見て「こんな家庭を持ちたい」と憧れた人もいた▼翻って、今の日本では児童虐待が気にかかる。5歳の結愛(ゆあ)ちゃんが亡くなった東京・目黒虐待死事件。母親は元夫から執拗(しつよう)な心理的暴力を受けており、暴力と虐待の連環が悲しみを深くする。虐待は人ごとでなく誰もがリスクを秘める。京都府、京都市での相談件数も増え続け、3年連続で過去最多を更新した▼家族の形は変わり、かつて丸いちゃぶ台が象徴した一家の「団らん」は失われつつある▼団らんの団は丸くかたまる、丸く集まることを表す(白川静著「常用字解」)。その意を大切に、愛する子に向けてしまう角張ったとげとげしい感情を、家族や地域で支え合い、和らげたい。