秋祭りの屋台で、香ばしく匂う焼きトウモロコシが楽しみという人も多いのでは。もし、たくさん売れ残った品をポンと買い取ってくれる客がいたとしたら、その人は恩を売ったつもりでも、貪欲な商人は無理が通るならと別の物も押しつけてこよう▼そんな駆け引きの機微を思うのが、首脳間で最終合意した日米貿易協定だ。米国産の牛・豚肉などの関税を環太平洋連携協定(TPP)水準まで下げる一方、日本の自動車・部品は関税撤廃の対象から外された。米国側の圧勝との評が聞かれる▼その伏線が、8月の首脳会談にあったのではないか。トランプ大統領は、米中摩擦の影響で余った飼料用トウモロコシを「日本が全部買ってくれる」と得意顔だった▼安倍晋三首相は、国内産地の害虫被害で前倒しの輸入が必要、と応じた。自国の都合としつつ、再選に向けて農業票を得たいトランプ氏を援護した形だ▼ところが、全部引き受けると日本の年間輸入量の4分の1に上る。そもそも被害が心配な粗飼料用と使い道が異なるため不足感はないという▼「強固な同盟」の名の下、求められるまま爆買いする米国産兵器の配備先と同様に、後から国が割り振りを押しつけようとするのか。首相の言うウィンウィン(相互利益)のような甘い匂いは漂ってこない。