オオカマキリの性的共食い。下にいるのがメス

オオカマキリの性的共食い。下にいるのがメス

<いきものたちのりくつ 中田兼介>

 食べちゃいたい、というのは私たちの使う愛情表現の一つですが、カマキリやクモ、ウミウシの中には交尾の前後で本当に相手を食べてしまうものがいます。この性的共食いと呼ばれる現象、雌雄同体のウミウシはややこしいのでおいておくとして、メスがオスを食べるのが法則です。交尾さえ終われば、共食いしたメスはおなかが膨れてたくさんの卵を産むことができるので、メスにとったら良いことしかありませんし、食われる側のオスにとっても結果的に自分の子が増えるというメリットがあります。

 とはいえオスの場合、食われなければ、別のメスを見つけて自分の子を産ませることができるかも知れません。自分を食わせて卵の数が、例えば5割増になるよりも、2匹のメスと子作りできれば2倍稼げるのでどちらが得かは明らかです。ですから、カマキリのオスは攻撃的なメスよりおとなしいメスを、また、エサを必要とする痩せた相手よりも太った相手を好むことが知られています。

 ですがここで問題があります。パートナーの共食いから逃れられたとして、本当に別のメスを見つけられるのでしょうか?

 メスと出会えないのならまだ食べられたほうがマシかも知れません。ニューヨーク州立大のウィリアム・ブラウンたちによると、たくさんのメスと出会った経験があるオスは、出会いの少なかったオスと比べて、プロポーズの際メスにゆっくりと近づき、離れたところでじっと待つことが多かったそうです。

 つまり、共食いされないよう慎重に慎重にふるまっていた、ということです。逆に、メス経験の少なかったオスは、やっと訪れた千載一遇のチャンスに身をささげるのをいとわないのです。男性の私としては、なんだか身につまされます。

◆中田兼介 なかた・けんすけ 1967年大阪府生まれ。京都大大学院で博士号取得。著書に「クモのイト」「びっくり!おどろき!動物まるごと大図鑑」など。「図解 なんかへんな生きもの」を監修。