宮津市の担当者が1月27日付で誓約書を提出するよう井上氏に促したメール。日時に当たるDataの「marzo」はイタリア語の3月で、3月24日にメールを送信したことを示す(画像の一部を加工しています)

宮津市の担当者が1月27日付で誓約書を提出するよう井上氏に促したメール。日時に当たるDataの「marzo」はイタリア語の3月で、3月24日にメールを送信したことを示す(画像の一部を加工しています)

 京都府宮津市が産地化を目指すオリーブの栽培を巡り、補助金の受給先を役員だった会社から自身に変更しようとした前市長の井上正嗣氏に対し、市の担当者が虚偽の日付による文書の作成を促して提出させたことが17日、分かった。変更は井上氏の独断で、市は会社側に確認作業をせず受給先を変更した。識者は不透明な手続きを問題視している。

 補助事業は京都府の「耕作放棄地再生・営農条件整備支援事業」。希望する事業者を市町村がとりまとめて府に申請し、宮津市の場合は交付時に市が金額を上乗せする。
 井上氏が当時代表取締役副社長を務めていた会社は今年1月27日、遊休農地約6300平方メートルをオリーブ農場に整備するなどとし、計70万円分の補助金を求めて事業計画書を市に提出。府は2月に事業を承認した。
 京都新聞社が入手した文書や市によると、会社と事業を巡ってトラブルになった井上氏が3月5日、会社の事業取り下げと個人での継続を口頭で市に申し入れた。市は同社代表取締役社長らに確認せず了承。計画書の事業主体を井上氏に差し替え、3月24日には、手続きに必要な誓約書を約2カ月前の1月27日付で書くようメールで伝えた。
 市農林水産課は「(井上氏は会社の)全くの第三者ではない。農地再生や栽培を引き継ぐとのことで、事業目的が達成できると判断した」と変更を認めた理由を説明する。一方、誓約書の日付をさかのぼって書かせた点は「事務が適切ではなかった」とした。井上氏は「誓約書は市の指導に従っただけ」と話している。
 事業主体を変更する届け出は市から府に提出されていないにもかかわらず、府は差し替えを認めた。府は「認識が甘かった。手続きが適正だったかもう一度、確認したい」としている。
 同志社大の野田遊教授(地方自治論)は「会社としての申請を個人が取り下げた形になっており、大きな問題だ。税金である以上は補助金を交付する先の名義は非常に重要なはずで、このような変更は通常ではあり得ない。手続きは厳格な公正さが求められ、日付が事実と違う文書では根拠にならない。いったん白紙にして再申請させるべきで、市の説明は理由にならない」と指摘する。