兵法三十六計は、古代中国の武将檀道済が説いたとされる駆け引きや戦法だ。戦力に余裕がある場合や敗色濃い時など戦況に応じ、36の計略を列挙する▼相手の油断を誘って攻撃したり、敵の主力を捕らえて弱体化させたり。今の時代にも通じる手段も少なくなく、興味深い。敵を欺くため、自身や味方を苦しめるという「苦肉計」は、苦し紛れに考え出す苦肉の策の語源となった▼真骨頂は「走為上(にぐるをじょうとす)計」だろう。あれこれ迷うより機を見て逃げ出すのが最上と。転じて面倒が起きれば逃げるが得策というわけだ(小学館「故事俗信ことわざ大辞典」)▼第201通常国会がきのう閉会した。野党は延長して「通年国会」を求めたものの、政府・与党は応じなかった。持続化給付金を巡る問題や前法相夫妻の買収疑惑など野党にとって攻めどころ満載であり、まさに逃げるが勝ちか▼第2波が危惧されるコロナ禍への緊急対応を考えれば、国会が果たすべき役割は大きい。積み残しとなった「桜を見る会」や「森友・加計」疑惑もうやむやにはできない▼敵の秩序に乱れがあれば、攻めずに自滅を待つのも三十六計の一つだ。この一手、与野党どちらに有利に働くのか。だがコロナで政治に向ける国民の視線は厳しい。浅はかな政治戦略が奏功するほど甘くはない。