北朝鮮が、開城(ケソン)工業団地にある南北共同連絡事務所を爆破した。

 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長による2018年の首脳会談を受けて設置された。南北協力の象徴的存在であり、文政権最大の成果ともいえる事務所の爆破で韓国との対話を拒絶する姿勢を示した形だ。

 北朝鮮の朝鮮人民軍総参謀部は韓国と対峙(たいじ)する前線部隊の増強も表明した。一方、韓国大統領府は、北朝鮮がさらに状況を悪化させれば強力に対応すると警告した。

 南北の対立が先鋭化すれば、軍事衝突に発展しかねない。北朝鮮は朝鮮半島の緊張を高める挑発行為を直ちにやめるべきだ。

 事務所の爆破は、正恩氏の妹の金与正(キムヨジョン)党第1副部長が13日の談話で予告していた。韓国の脱北者団体による体制批判ビラ散布への報復としているが、散布は00年代半ばから行われている。額面通りに受け取ることはできない。

 北朝鮮は経済の悪化が深刻化しているとされる。17年の国連制裁強化で石炭や海産物などの輸出や労働者の海外派遣が禁止され、主要な外貨収入源が断たれた。

 ここに新型コロナウイルスが追い打ちをかけた。感染対策で中国との国境を封鎖したことで、中朝貿易は前年比で1割以下にまで激減したという。

 正恩氏は18年から韓国との対話にかじを切り、史上初となる同年6月の米朝首脳会談につながった。だが、国際社会が求める非核化交渉は頓挫し、制裁解除を引き出せずにいる。

 今回の強硬な措置には、対米協調を維持する韓国への敵意をあおることで国民の不満をそらし、内部結束を図ろうとする狙いがうかがえる。11月に大統領選を控える米国の出方を見極めたいとの意図もあるのだろう。

 だが、制裁が解除されないのは、非核化の具体策に北朝鮮が踏み込まないからである。強硬策に活路を見いだすのではなく、非核化を着実に進めることで苦境の打開を目指すべきだ。

 そのためには、08年から中断している6カ国協議を構成した各国の役割が重要になろう。

 制裁についての考え方は日米と中ロで大きな隔たりがある。それでも、核政策を転換することが安全保障だけでなく経済面でも有益であると、あらゆる手段を使って北朝鮮に理解させる必要がある。

 危険な行為には毅然(きぜん)と対応しつつ、対話を進める努力を怠ってはならない。