染色家三浦景生さん、以左子さん父娘が、展覧会ポスターのデザインを基に制作した作品

<ミュージアムのちから コロナ禍に考える>

 つるバラを金属で表現したイタリア製の華麗な門扉、南欧風の外観に引かれて立ち寄る人もいるという。中信美術館(京都市上京区)は2009年に開館した。元は手描き友禅作家、羽田登喜男さんの私設美術館で、現在は同館の運営団体が開催する「京都美術文化賞」受賞作家の作品を中心に展示する。

 通りに面した間口は狭いが、展示スペースは広く、天井が高い。手すりや床には優雅に湾曲した装飾が施される。階段は大理石だ。コロナ禍で休館する直前は日本画家小嶋悠司さんの回顧展が開かれていた。一人の作家の世界を表現するのにふさわしい奥行きと存在感がある。

 京都中央信用金庫の戸田涼子さんは2012年、同館を担当する部署に配属された。当時、染色家の父娘展「三浦景生・以左子展」が準備中だったが、上司も含めて担当者が代わり、展示内容や空間の決定、ポスターや図録制作など全てを手探りで進めた。

三浦景生・以左子展ポスター

 三浦さん父娘にも助けられた。何度も自宅を訪ねて打ち合わせを行い、合間に景生さんにスケッチや陶芸作品を見せてもらって、緊張の中で喜びを感じた。2人の作品を並べたポスターのデザインを父娘が気に入り、それに似せて、屏風(びょうぶ)の左側を景生さん、右側を以左子さんが手がけたコラボレーション作品も制作、展示された。

 景生さんの作品の魅力について、独自の色彩世界と遊び心があり、温もりが伝わると戸田さんは表現する。作家の人柄に触れて感じた部分もあるだろう。

三浦景生「牡丹之図」 1974年

 館の活動や収蔵の核となる京都美術文化賞は初回(1988年)受賞者が日本画の秋野不矩、洋画の小牧源太郎、陶芸の坪井明日香。以後も京都ゆかりの巨匠が並ぶ。ただ、年5回開く展覧会は館蔵品にこだわらず、著名作家でも見られる機会が少ない作品を集めて独自の展示を目指している。

 「美術館で初めての作品に触れ、心が動くのはとても大きなこと」と戸田さんは考える。大学で芸術学を専攻し、国内外の美術館に何度も足を運んだ。教科書で見たときは何も感じなかったのが、実物は違う。複製では好きになれなかったピカソの「ゲルニカ」も、スペインで本物を見て強くひかれた。心が震えた体験が中信美術館の運営に生きている。

 

 中信美術館 公益財団法人中信美術奨励基金の母体である京都中央信用金庫の職員が財団を担い、美術館運営、展覧会企画、「京都美術文化賞」運営を行っている。最上階の談話室は美術系書籍に囲まれた明るいサロン風の空間で展覧会初日に開放することもある。1階には茶室を備える。現在は休館中。京都市上京区下立売通油小路東入ル西大路町。075(417)2323。