安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領が会談し、北方四島のうち歯舞・色丹の2島引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言に基づく平和条約締結交渉を加速させる方針で一致した。

 同宣言を基礎に平和条約締結に向けた交渉を進める方向性は、昨年11月の首脳会談でも合意している。今回の会談でその方針を再確認したことは、今後の領土交渉が実質的に2島に絞って行われる可能性が高まったことを意味する。

 択捉島と国後島を含む4島返還を「現実的といえない」とする判断が安倍政権内部にあるという。

 政府は、4島を「固有の領土」とし、平和条約締結の前提として帰属問題の解決を掲げてきた。

 仮に2島決着に踏み切るなら、択捉・国後両島の返還は遠のく。元島民を含め、国民の理解を得られるかどうか。安倍政権は説明を迫られることになろう。

 両氏による会談後の共同記者発表では領土交渉の進展をうかがわせる説明はほとんどなかった。

 通訳だけを交えた「1対1」の話し合いも行ったというが、今後の交渉については2月中に外相や首脳特別代表による協議を行うことが発表されただけだ。

 領土を巡る両国の隔たりの大きさを改めて示した形といえる。

 代わって印象づけられたのは、経済面での協力を領土交渉に先駆けて進めようとの姿勢だ。記者発表では、北方領土での共同経済活動の実現を急ぐことや貿易投資、人的交流拡大などが示された。

 ただ、観光などの共同経済活動を巡っては、4島を自国領とするロシアが日本の掲げる「特別な制度」導入に難色を示している。

 経済活動でも両国の認識は隔たる。歩み寄れなければ領土交渉にたどり着くこともできまい。

 安全保障面への影響も見逃せない。両国は平和条約に「互いに敵対的な軍事政策や行動を取らない」と明文化することを検討しているという。ロシアは、北方領土が日本に引き渡された場合、米軍の展開を警戒している。

 北方領土周辺はロシアもミサイル増強構想を持つなど軍事的な拠点となっている。このエリアでの緊張が緩和されれば、北東アジアの安定にもプラスとなろう。

 だが、日米同盟のあり方にもかかわるだけに、日ロの検討を米国が認めるかどうかは見通せない。

 領土問題は、経済や安保など幅広い課題を抱える。国際情勢や国内世論を見据え、焦らず、粘り強く取り組む必要がある。