環境DNAの調査イメージ

環境DNAの調査イメージ

 海や湖の水をくんで分析するだけで、生息する魚介類の種類や量を推定できる新技術「環境DNA」の調査手法の開発と普及に、龍谷大の山中裕樹講師(39)が取り組んでいる。ノウハウの伝達などを目的に昨春、研究者仲間と学会を立ち上げた。琵琶湖で季節ごとの魚の分布データを蓄積しており、山中講師は「水中生物の分析モデルを琵琶湖で築きたい」という。

 環境DNAは、魚が水中に排出したふんや粘液などから遺伝子を取り出し、生物の種類を推定する技術。水1~2リットル中の遺伝子を抽出・増幅して専用機器で測定すれば、半径数百メートル内に生息する生物の種類が分かる。魚を捕獲する調査に比べ「コストが格段に低い」といい、魚の資源量調査や希少種・外来魚の把握に役立つと期待されている。

 山中さんは約10年前、神戸大の源利文准教授とともに国内でいち早く環境DNAの研究を始めた。以来、分析精度を高め、沖縄県の美(ちゅ)ら海水族館で2014年に行った実験では、バケツ1杯の水から飼育魚類の93%に当たる168種を特定できたという。

 京都大の研究者らと18年4月に設立した「環境DNA学会」(会長・近藤倫生東北大教授)では事務局役を務める。同技術を用いる調査会社も現れる中、「業者によってレベルに差があると手法の信頼性が下がる」として、分析ノウハウを助言し、統一手法を確立することを目指している。

 琵琶湖では15年から、春夏秋冬の季節ごとに北湖と南湖の沿岸計21地点で採水、分析を続ける。年間50種の魚の遺伝子を検出し、「時期や場所を問わず出現する」というフナやコイ、「北湖限定」のウグイやアブラハヤなど、出現頻度に合わせて魚種を四つのタイプに分類した。

 研究者仲間が遺伝子のデータベース化を進め、今では9千種の生物と照合できる。山中さんは琵琶湖の水から抽出した遺伝子を凍結保存しており、後から生物の分布や種類の変化を調べられるのも強みだ。「捕獲網の要らない」生物調査が当たり前になる日を目指し、「環境DNAの可能性を発信したい」と力を込める。