高次脳機能障害について伝えるイベントで演奏するため、練習を重ねる西村保充さん(左)と妻の綾子さん=京都市下京区の音楽スタジオ

高次脳機能障害について伝えるイベントで演奏するため、練習を重ねる西村保充さん(左)と妻の綾子さん=京都市下京区の音楽スタジオ

 京都市は、脳の病気や交通事故などで脳を損傷した後、注意障害や記憶障害といった症状により生活に支障が出る「高次脳機能障害」に関するイベントを26日に中京区のゼスト御池で開く。外見では分かりにくい「見えない障害」と言われ、社会の理解が課題になる中、イベントに出演する音楽バンドメンバーが日々の葛藤や障害とともに生きる工夫、音楽への意気込みを語った。

 2007年に結成し、市内で活動する6人組のバンド「THE GOLD☆STAR」でベースを担当する西村保充さん(35)=右京区。14年6月3日朝、ミニバイクで出勤途中に中京区の交差点で車にひかれた際に、頭を強打して高次脳機能障害と診断された。

 事故時に近い過去の記憶を失い、09年に結婚した時の思い出さえなくしかけたが、市の支援施設で2年間リハビリに取り組み、徐々に記憶を取り戻した。しかし、より新しい記憶が持続しない症状は残った。

 風呂でリンスを洗い流すのを忘れ、髪を乾かす時にベタベタした触感に気づく。バスに乗ってもどこで降りるのか分からなくなる。会ったことのある人を忘れ、相手に嫌な印象を抱かれることもある。

 医師から「工夫して記憶障害と付き合っていくしかない」と言われ、スマートフォンのメモ機能に行動予定を記すようにした。バンドボーカルで妻の綾子さん(39)にLINE(ライン)で行き先や用事を伝えてもらっている。

 現在は障害者が働く事業所に通い、バンド活動も再開した。市の支援施設に通っていた際、施設内の催しで演奏できたことが自信につながったという。「事故前は数時間で覚えていたような曲に2カ月もかかったが、覚えて忘れ、思い出すことを繰り返した」と振り返る。

 イベントは、「こうじの世界 高次脳機能障害×麹(こうじ)」で、初カバーのポップスやオリジナルの計4曲を披露する。「練習を重ねて指にコード進行を覚え込ませ、記憶障害があっても譜面を見ずに演奏したい」と力を込める。午後0時10分と午後2時10分の予定。

 高次脳機能障害の当事者や家族が自らの経験を語るコーナーも設ける。発酵食品を生み出す麹との語呂合わせで、市内の食品関連企業が開発した麹商品も販売する。