検察当局は、前法相の河井克行衆院議員と妻の案里参院議員を公選法違反の疑いで逮捕した。

 案里容疑者が初当選した昨年7月の参院選を巡り、票の取りまとめなどを依頼する趣旨で地元の広島県議らに現金を配ったとする買収容疑である。

 閣僚経験者が検察に逮捕されるのは2002年の鈴木宗男氏から18年間なかった。しかも法務行政のトップを務めた元閣僚が政治とカネの問題で逮捕されるのは極めて重大だ。

 克行容疑者は首相補佐官を務めるなど安倍晋三首相に近い。案里容疑者の参院選出馬は官邸、自民党本部が主導した。

 党本部が提供した1億5千万円もの巨額の運動資金が、買収の原資となった可能性がある。

 検察は党本部などの関与を含め、厳正な捜査で疑惑の全容解明を進めてほしい。

 逮捕容疑は、参院選で案里容疑者を当選させるため、克行容疑者が91人に対し計約2400万円、夫妻が共謀して5人に計170万円を渡した疑い。

 提供された側の大半は、検察の事情聴取に現金を受け取ったことを認めているという。

 広島県議や広島市議、県内の首長、陣営関係者、後援会関係者らに1人当たり現金5万~数十万円を渡していたことが判明した。

 買収が事実なら、広範囲に違法な行為が行われていたことになる。民主主義の根幹である選挙の公正さを踏みにじるものだ。

 疑惑の発端は、車上運動員に違法な報酬を支払ったとの昨秋の週刊誌報道だった。夫妻は疑惑を否定してきたが、事実関係などについて何ら説明していない。

 国会にも長い間姿を見せず、説明責任から逃げたと言わざるを得ない。逮捕前日に自民党を離党したが、説明できないなら議員辞職すべきだった。

 克行容疑者は昨年9月に発足した第4次安倍再改造内閣で法相に起用され、疑惑発覚を受けてわずか2カ月足らずで辞任した。

 安倍首相の任命責任が厳しく問われる。だが首相は責任を認めながらも具体的な行動に移さず、言葉だけの対応に終わっている。

 そればかりか前東京高検検事長の定年延長などを巡り、検察庁人事に介入しようとしたと大きな批判を浴びた。夫妻の立件を恐れたためとの見方もある。

 首相官邸、自民党は検察の捜査に進んで協力するべきだ。疑惑解明を妨げるようなことがあってはならない。